発展途上の日本代表が抱える大きなテーマ オークランドシティ戦で見えた現在地

元川悦子

練習試合で勝利も完成度は不十分

日本代表は4日、オークランドシティとの練習試合を実施。遠藤、岡崎のゴールで2−0と勝利を収めた 【Getty Images】

「今日はクラブレベルでは世界でも最も良いクラブの1つと対戦したので、非常に良い試合になった。勝利を収めることができたのも良かった。この試合のテーマは早くボールを動かすこと。クロスを上げることだった。得点は2つともクロスからスタートしたもの。1つはこぼれからだった。ただ、もう少し早くボールを動かさないと。そういうところはさらに上げていかないといけないと思う」

 ハビエル・アギーレ監督がこう総括した通り、2015年の日本代表の初ゲームとなった4日のオークランドシティとの練習試合(オーストラリア・セスノック)は、遠藤保仁と岡崎慎司のゴールで2−0と手堅く勝利を収めた。

 前半33分にミドルを決めた遠藤は「打ってみれば何か起きるっていうラッキーなゴールだったけれど、練習試合とはいえ結果を求めてやってますし、良いスタートが切れたかな」と前向きだった。しかし、後半終了間際に2点目を追加した岡崎の方は「クロスから崩してという意図はあったけれど、それ以外のバリエーションが少なかった」と反省を口にした。確かに全体的に見るとチームの完成度は不十分で、1週間後に迫った12日アジアカップ初戦・パレスチナ戦(ニューカッスル・スタジアム)に向けて改善点がいくつか浮き彫りになった。

相も変わらず決定力不足を露呈

 この日の日本は90分間通して現体制のベースの布陣である4−3−3で戦った。先発はGK川島永嗣、DF(右から)酒井高徳、塩谷司、森重真人、長友佑都、アンカー・長谷部誠、右インサイドハーフ・遠藤、左インサイドハーフ・香川、右FW本田圭佑、左FW乾貴士、トップ・岡崎という顔ぶれ。この陣容で後半15分まで戦い、遠藤、香川、乾に代わって今野泰幸、清武弘嗣、武藤嘉紀が出場。後半40分に塩谷が足をつったため、急きょ昌子源がラストの時間帯だけピッチに立った。3日に合流したばかりの吉田麻也は大事を取って出場せず、日本で静養中の柴崎岳、現地で静養中の豊田陽平は当然ながらメンバーに入らなかった。相手のオークランドシティは4−1−4−1システム。日本人の岩田卓也は左サイドバック(SB)で先発。もう1人の日本人選手・松本光平は右SBで後半33分からピッチに立った。

 年末年始の国内合宿の効果か、日本の出足は非常に鋭かった。開始早々の2分には、長谷部→遠藤→本田と縦パスがつながり、その折り返しに香川が絶妙のタイミングで飛び出む。だが、ワントラップした瞬間にボールがズレて肝心のシュートがGK正面に飛んでしまった。「あれは自分の形なので決めなければいけなかった。ちょっと力が入ってしまった」と背番号10は悔しがったが、こういう決定機をものにできないと嫌なムードが漂うのがサッカーだ。

 案の定、日本はその後も一方的に押し込んだが、決定力を欠いてしまう。長友のクロスを岡崎がヘディングした5分の得点機、同じく長友のクロスに岡崎、本田らが飛び込んだ10分のチャンス、ショートコーナーから森重がファーで合わせようと試みた18分の場面などたびたび絶好機を迎えるが、なかなか得点が奪えない。こうした拙攻が続くうちに、気温30度超の猛暑のダメージから選手たちの動きがじわじわと落ち、チームに停滞感が広がっていく。長友のクロスのはね返りを拾った遠藤のシュートがDFに当たって入るというアクシデント的な先制点が転がり込んだのは、まさにそんな時間帯。これが入らなければ、前半は0−0で折り返していた可能性が高かった。

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著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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