先制弾の旗手が静岡学園を選んだわけ 東福岡撃破の立役者、殊勲の2年生

川端暁彦

旗手(右)のシュートで先制に成功した静岡学園が優勝候補・東福岡を破った 【写真は共同】

 全国高校サッカー選手権は3日、各地で3回戦が開催されニッパツ三ツ沢球技場の第1試合では、夏の高校総体王者・東福岡(福岡)に、伝統校の静岡学園(静岡)が挑み、3−0で勝利を収めた。

「あれが大きかった。ああいうのを決めるかどうかだった」

 静岡学園・川口修監督がそう振り返ったのは、後半24分に生まれた待望の先制点についてだ。左CKからのクリアボール。「こぼれてきたらシュートにいこうと決めていた」と語るMF旗手怜央が右足を振り抜くと、敵味方の間をすり抜けたボールはゴールネットを揺らしていた。左右両足でのシュート力に定評を持つウイングバック(WB)がたたき込んだ1点を皮切りにさらに2度ゴールネットを揺らした静岡学園は3得点で快勝。優勝候補筆頭チームを打ち破ってみせた。

 旗手がサッカーを始めたのは東京都にいた時期で、「周りの友達がやっていたので」自然とボールを蹴り始めたのだという。父・浩二さんはかつて黄金時代のPL学園(大阪)で甲子園準優勝も果たしている選手だが、息子の「サッカーをしたい」という声に反対の言葉はなかったという。その後、2006年度の高校選手権85回大会で静岡学園がMF杉浦恭平(現・ヴィッセル神戸)らを擁して8強に進出した際に大きな刺激を受け、「ここでやりたい」と願うようになり、高校から静岡学園に進学することになった。

 1年生で早くも出場機会を得るなど、運動能力の高さ、シュート力に関して高い評価を受けてきた旗手は、3バックシステムを採用するようになった今年のチームでは左WBに定着。この日は神戸内定のMF増山朝陽とマッチアップすることになり、「当たってもビクともしない。まるで経験したことがない強さでした」と笑いつつも、怯まずに対応し続け、ゼロ封へ大いに貢献した。

 これで静岡学園は8年ぶりの8強進出。奇しくも旗手が「こんなチームでプレーしたい」と願うきっかけになった、06年度のチームが果たして以来の8強進出となった。もちろん、それはここで満足というわけではない。殊勲の2年生は「全国制覇までしっかり辿り着きたい」と、早くも2日後の準々決勝を見据えていた。
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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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