選手権へ戻ってきた高川学園・江本監督 “後継者”とともにリベンジを目指す

中田徹

高川学園の2回戦の相手は神奈川の日大藤沢。江本監督の12年越しとなるリベンジはなるか 【写真は共同】

 全国高校サッカー選手権の1回戦が31日に行われ、高川学園(山口)が都市大塩尻(長野)に2−1で勝利を収め2回戦進出を決めた。

 今から12年前、第81回高校サッカー選手権の1回戦で多々良学園(現・高川学園)は静岡学園(静岡)を1−1からPK戦の末、下した。背番号3のオレンジ色のユニホームを着た江本孝はセンターバックの位置からストライカーの中原貴之(ベガルタ仙台)にロングパスを次々通し、チームの勝利に貢献した。そのセンスの高いプレーに「まるでフランク・デ・ブール(元オランダ代表)のようだ」と当時、僕は感嘆したものだった。

 あれから12年経った。江本は高川学園の監督としてニッパツ三ツ沢球技場に戻って来た。コーチングエリアに立って、ボールのない所にも首を振りながら指示を出す彼の姿に、現役時代の懐かしい面影が残っていた。

 ところが、ピッチの上にも、まるで昔の江本のような選手がいた。それが背番号13のセンターバック石田皓大主将だった。首を振りながら周囲を見渡し、ボールから遠い方のサイドに立つ左サイドバックに対して、左腕を使いながらポジショニングを修正する姿。そして冷静な判断から相手のボールをカットし、左足のロングパスを繰り出す姿は、江本とうり二つだった。

「あの子はピッチ上の監督。安心して僕は見ていた。(選手としては)僕以上でしょう」(江本監督)

 当の石田は、これまで監督の現役時代に似ていると言われたことがないそうで、「監督の現役時代を見たんですか!?」と目をパチクリ。江本によれば、石田は相手に対して粘り強くマークできるが、ボールが近くにないときの動きに難があったようだ。そこで、首を振りながら周囲を見ることや、体の向きの矯正をしているうちに、当事者たちが気付かぬまま似たようなプレースタイルになってしまったようだ。

 12年前の思い出は甘いだけでない。多々良学園は2回戦で桐蔭学園(神奈川)相手に2−3と競り負けてしまったが、この時、江本はマークしていた阿部祐太朗に2ゴールを奪われてしまったのだ。今大会の2回戦で高川学園は、同じ神奈川県代表(日大藤沢)と戦うこととなっただけに「僕のときは平塚で桐蔭とやって、自分がマークした阿部祐太朗選手に2点やられちゃいましたので、子どもたちに頑張って欲しい。リベンジしないといけない」と江本は意気込む。

 日大藤沢戦を前に、石田は「もっと守備の連動を修正しないとやられてしまう」と守備の再チェックをする模様だ。

 ちなみに石田の進路は「江本監督も通っていた」ということで福岡大。プロになる夢が果たせなかった時には、高校サッカーの監督として再び選手権の舞台に戻ってくることを目指すという。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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