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慶応高、サラリーマン監督と狙う日本一
「僕らの何がわかる?」反発の部員を説得

昨季全国準優勝の桐蔭学園に快勝

週末しか練習に参加できない中で、慶応高を全国大会に導いた稲葉監督(後方)
週末しか練習に参加できない中で、慶応高を全国大会に導いた稲葉監督(後方)【斉藤健仁】

 今年度も12月27日から大阪・近鉄花園ラグビー場で、「花園」こと全国高校ラグビー大会が行われている。30日からいよいよシード校が登場するが、最も耳目を集めている高校の一つが慶応だ。

 慶応は神奈川県予選決勝で昨年度の花園準優勝、そして春の選抜大会準優勝の桐蔭学園に29対11で快勝し、桐蔭学園の10連覇を阻止し、単独では13年ぶりの全国大会への切符を手に入れた(2010年度の90回記念大会は神奈川から桐蔭学園と慶応の2校出場)。

 

「能力の高い選手がそろっているから勝てたとも言われているんですよ……」。そう少し悔しそうな表情を見せるのは慶応を率いる稲葉潤監督(38)だった。個の力だけが突出しているわけではない。サラリーマン監督である稲葉監督が、土日中心にさまざまな工夫を凝らし、どうやってチーム力を高め、今季の花園の優勝候補の一つ桐蔭学園を破ったのか――。

「桐蔭を倒すためには、日本一を目指さないと」

大学生との練習などで強化を進めてきた慶応高ラグビー部
大学生との練習などで強化を進めてきた慶応高ラグビー部【斉藤健仁】

 稲葉監督は同校OBで、慶応大時代は副将として大学選手権ベスト4に貢献、東京ガスやニュージーランドなどでもプレーしたBKだった。2007年に現役を引退、2008年からコーチを務め、4年前から監督に就任。「全国制覇を狙うこともそうですが、大学と連動して鍛えることで7年間かけて育てば慶応大が帝京大の壁を越えられる。そのために高校を強くすることが僕の役目」と、一貫指導体制の下、ルーツ校をより強くさせるという信念を持つ。


 2年前から身体を大きくするためにスペシャルランチを高校に用意してもらい、いわゆる“高・大連携”で平日の2、3日間ほどは慶応大ラグビー部と一緒の練習も敢行。さらに今年からは大学のトレーナーの協力の下、本格的にフィジカル強化も進めるなどし、全国の強豪と戦う土台を作った。「7対3でフィジカルがやられてしまえば戦えません」(稲葉監督)


 だが、過去3年間は19対22、14対19、22対34で敗れ、桐蔭学園の大きな壁の前に、花園への出場は叶わなかった。そのため稲葉監督は「桐蔭を倒すためには、フィジカル、技術、戦術、戦略、規律、コミュニケーションと、すべてにおいて日本一を目指さないといけないと感じた」と振り返る。

「崩し」の部分に焦点を当てて強化

長身選手がそろうFWによるモールは強力な武器となっている
長身選手がそろうFWによるモールは強力な武器となっている【斉藤健仁】

 コーチらと協力し長身選手がそろうFWの武器としてモールを強化しながらも、試合中の「判断」では全国の強豪に劣っていることを実感する。それは2014の1月、「裏花園」とも呼ばれているサニックスワールドユース(本大会はゴールデンウィークに開催)の予選会に参加し、一昨年度の花園の準優勝である御所実(奈良)に19対23で敗戦、さらに2月の新人戦ではライバルの桐蔭学園に14対33で敗れたことが影響していた。


「御所実の選手たちは戦い方をよく知っていました。また(昨年度の花園で優勝した)東海大仰星の選手たちも個々の判断力が素晴らしい。慶応も桐蔭に勝つには、判断の部分を伸ばしていかないといけない」(稲葉監督)


 戦術面では「崩し」、「仕留め」、「防御」という3つに分けて強化を進めていたが、特に相手のディフェンスをどのような判断をして崩すかという「崩し」の部分に焦点を当てた。また、戦略面ではどう相手に強みを出させず、弱みを攻めるためにどのような判断をしてキックを使うかなどの精度を高めていった。ただ、1〜2月頃は、稲葉監督は「土日しか練習が見られない中でいったい何をすべきなのか……」と試行錯誤する日々だった。

斉藤健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。 学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「世界最強のゴールキーパー論」(出版芸術社)、「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)など著書多数。最新刊は「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版/2017年11月刊)。

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