ギジェルモ・リゴンドーのすごさとは!?=米国では敬遠された世界屈指の“技巧派”
伝わりづらい“空間支配能力”
「物理的なスピード」×「判断のスピード」で対戦者を置き去りにする空間支配能力のすごさが際立つ 【写真:ロイター/アフロ】
八重樫東(大橋)との激闘で日本でもさらに浸透したロマゴンのすごさは理屈を抜きにしてもわかりやすいと思うが、リゴンドーのすごさは野球にたとえて言うならファインプレーをファインプレーに見せない守備の名手といったところ。つまりは伝わりづらい。瞬間的な出入りの速さとハンドスピードはわかりやすいと思うが、空間支配能力と表現したくなるような抜群の距離感と、展開を先読みする能力に長けており、相手に先んじて動くから「物理的なスピード」×「判断のスピード」で、対戦者を置き去りにしてしまうというわけだ。
天空を飛翔する蝶のようなボクシング
「リゴンドーのボクシングは天空を飛翔する蝶のようなボクシング。一発当てられるかどうかというレベルで、もしかしたらアレクシス・アルゲリョだって当てられないのではないかと思わせる」
宮崎氏は「攻防技術は精密機械よりも精密。決してノックアウトパンチャーではないが、一瞬のスキを絶対に見逃さない感性は人間というより動物的」と付け加える。その表現を借りるなら、天空を飛翔する蝶を捕まえることばかりにとらわれていると鋭い蜂の一撃に刺されるということになる。
巧緻な戦略が導く“退屈な試合”
「不気味なスナイパーという印象。パンチをピンポイントで的確に当てる能力がずば抜けていると感じる。特に左ストレートが一番。ディフェンスも優れているが、何よりもその左ストレートで恐怖心を植え付け、その上で距離を取るから相手は踏み込みづらくなり、リゴンドーに対して、脅威を与えるパンチが打てなくなる。ドネアもそうだった」
確かにドネア戦でのリゴンドーは序盤に先制攻撃を仕掛けると、中盤以降はリスクを冒すことなく、ヒット・アンド・ランに徹した。一発当てようとしても、その出端を狙われているからうかつには踏み込めない。相手が出て来ないのなら、リゴンドーも無理には攻めない。こうしてリゴンドーの巧緻な戦略にはまり込み、見合う時間の長い“退屈な試合”は成立する。
弱者は容赦なく仕留める無慈悲さも…
今まで来日したボクサーの中でトップクラスの実力者。大みそかの試合ぶりは日本ファンを満足させることができるのか!? 【船橋真二郎】
「日本のみなさんが私のボクシングを理解し、好きになってくれるなら、日本でファイトし続けたい」
果たしてリゴンドーのスタイルは受け入れられるのか。
「今まで来日した選手の中では、間違いなくトップクラスのうまさを持っているし、見るだけで幸せという選手」(宮崎氏)
世界屈指の技巧を目撃し、みなさんに判断してもらいたい。