17歳新星・宇野昌磨が見せた強心臓ぶり 全日本特有の雰囲気にものまれず3位発進
観客総立ちの演技にも涼しい顔
ほぼノーミスの演技で大歓声を受けた宇野だが、演技後は涼しげな顔をしていた 【坂本清】
12月26日に開幕したフィギュアスケートの全日本選手権(長野・ビックハット)。2週間前にバルセロナで行われたジュニアグランプリ(GP)ファイナルを歴代最高得点で制した17歳の宇野が、男子ショートプログラム(SP)で85.53点を記録し3位につけた。
かつてない注目を浴びて迎えた今大会。宇野が登場した瞬間、会場の雰囲気はぴんと張り詰めた。しかし進化し続ける新星は、そんな空気の変化に戸惑いを見せるほどヤワではない。冒頭のトリプルアクセルこそやや乱れたが、続く4回転トウループはきれいに成功。後半のトリプルフリップ+トリプルトウループも決め、スピンとステップでもレベル4を獲得した。得点は非公式ながらSPの自己ベストを10点以上も上回っている。
それでも宇野は不満げな表情を見せた。
「いい得点をいただけてうれしいんですが、まだまだやれることをやれば点数はもっと出ると思います。具体的には冒頭のトリプルアクセルはマイナスがついているし(出来栄え点で−0.60点)、スピンや表現の部分でも満足いくものではなかったので、それが心残りです」
4回転とトリプルアクセルを習得
ジュニアGPファイナルではFSで4回転を決めるなどして圧勝 【Getty Images】
快進撃はとどまることを知らない。前述のように12月11日から行われたジュニアGPファイナルではFSで4回転を決めるなど、2位に25点差をつける圧勝で日本人としては小塚崇彦(トヨタ自動車)、羽生結弦(ANA)に続く3人目の快挙を成し遂げた。宇野を指導する山田満知子コーチも「今季は飛躍の年。4回転とトリプルアクセルを習得できたということで良い波が来ている」と、愛弟子の成長を実感している。
今大会ではより高得点を狙うためにSPの構成を変えてきた。ジュニアGPファイナルのSPでは、規定で入れられなかった4回転を組み込んだのだ。
「ジュニアでは入れる機会が少なかった。チャンスがあったので、4回転は入れたいなと思っていたんです。自信にもつながるし、決められたことはすごくうれしかったです」
それでもSPの自己評価は思いのほか低い。
「自分の中では50点くらいです。ジャンプもなんとか決めたという感じなので。4回転は良かったと思いますが、その他の面でまだ心残りがあるので、そう考えると50点くらいかなと」
こうした自分を律する厳しさや客観性、冷静さはトップスケーターたちが共通して兼ね備える特徴でもある。