スポーツに投資の有効性はあるか? スポンサーシップの進化と可能性を探る

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胸スポンサーから新たな取り組みへ

年末恒例のスポーツビジネス専門番組、第3弾のテーマはスポンサーシップ。桑田真澄氏(右)と大橋未歩アナウンサーがMCを務める 【桑田式スポーツK営学】

 スポーツと企業の関係を語る際、欠かせないのがユニホームの胸スポンサーだろう。企業はチームを媒体にブランドあるいは商品を宣伝し、チームは企業からの資金を強化、運営などに充てる。その胸スポンサーの起源はサッカーと言われている。

 1950年代、ウルグアイのペニャロールがユニホームの胸に企業広告を入れ、収益アップを図った。80年代には、イングランドのマンチェスター・ユナイテッドが初めて胸スポンサーを採用。契約したのは日本の企業「シャープ」だった。当時のレートで年間4500万円。その価値は年々高まり、今では50億円近くに跳ね上がっている。

 歴史を振り返ると、企業のスポンサーシップと言えば、ユニホームやスタジアムなど至るところに宣伝素材を散りばめ、アピールしていくのが王道だった。しかし近年はそれだけにとどまらず、スポーツと企業の関係に変化が生まれている。世界はもちろん、日本でも新たな取り組みが増え、その可能性は広がっているのだ。

 こうしたスポーツビジネスの最新事情に迫ったのが、テレビ番組『桑田式スポーツK営学』(BSジャパン、12月29日19時〜)だ。同番組は年末恒例のスポーツビジネス専門番組で、一昨年、昨年に続いて第3弾を迎える。第1弾は野球、第2弾はサッカー、そして今回はガラリと視点を変えて、スポンサーシップから展開する。ズバリ、「“スポーツに投資する”ということについて考える」。

 壮大なテーマを掲げた理由を、番組プロデューサーの遠藤正紀氏に聞いた。
「1つは、米国のカレッジフットボールを見て思ったことで、なぜ大学スポーツでお金を稼げているのかを、十数年ずっと考えていました。もう1つは、あるスポーツ関連企業の幹部と話したときに、『一般産業界からもっとお金がスポーツに流れてくるようにならないと、日本のスポーツは良くならない』と言われたことですね。スポーツとお金をつなげたときに、スポンサーという切り口が見えてきて、私が前々から考えていたこともあって、大きいですけど、テーマにしてみようと決めました」

新潮流“アクティベーション”

番組ではコカ・コーラやレッドブルをはじめ、米国の最新スポンサー事情を紹介。今後“アクティベーション”が日本でも主流となるか 【桑田式スポーツK営学】

 今回の番組では、世界的な企業の事例、最新のスポンサーシップの形を取り上げている。具体的には飲料メーカーから2社、コカ・コーラとレッドブルだ。前者のコカ・コーラは五輪、サッカーワールドカップ(W杯)をはじめとするビッグイベントにいち早くから投資し、スポーツを支え続けてきた。レッドブルも近年スポーツを利用した戦略でブランド力を構築してきた。番組では、そのユニークなマーケティングに迫る。

 ここで注目したいのが、米国スポーツビジネスの新潮流“アクティベーション”だ。簡単に説明すれば、「権利の有効活用」となる。スポンサーシップの権利を効果的に活用し、投資効果を最大化する手法である。例えば、サッカーW杯のオフィシャルスポンサーを務めたマクドナルドが、W杯で選手と入場するエスコートキッズを募集したケースが挙げられる。W杯スポンサーという権利を最大限に活用し、マクドナルドは消費者にまたとない「体験」を提供する。結果として、ブランド価値向上につながっていく。これがスポーツとスポンサーの新しい形というわけだ。

 番組MCを務める桑田真澄氏も、このアクティベーションに可能性を感じたようだ。
「スポンサーというと資金だけのイメージがありますが、お金だけではなく、お互いがもっと有効活用できることが、これからの時代では重要だと感じました。もっといろいろな考え、アイデアを出していけば、チームも企業もプラスになれると思います」

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