これほど慌ただしいＭＬＢのオフシーズンは珍しい。

　１２月上旬のウインターミーティングを前後して、カブス、ホワイトソックス、パドレスをはじめとする多くのチームが複数の著名選手を獲得する大補強を敢行した。例年、クリスマスから正月の期間に入ると静かなことが多いだけに、とりあえずはここで一段落だろう。しかし、ジョン・レスター（前アスレチックス）がカブス、ハンリー・ラミレス（前ドジャース）、パブロ・サンドバル（前ジャイアンツ）がレッドソックスに移籍し、ビクトル・マルティネスがタイガース残留を決めたのを先頭に、マックス・シャーザー（タイガースＦＡ）、ジェームズ・シールズ（ロイヤルズＦＡ）を除く大半の注目ＦＡ選手の行き先がすでに決まった印象がある。

　ただ、この活発な動きの中に、日本人選手たちはほとんど含まれていない。唯一、藤川球児（前カブス）がレンジャーズと１年１００万ドル（約１億１６００万円）の契約を結んだのみ。イチロー（ヤンキースＦＡ）、青木宣親（ロイヤルズＦＡ）、黒田博樹（ヤンキースＦＡ）、そして海外ＦＡ権を行使してメジャー行きをもくろむ鳥谷敬（阪神）の所属チームは決まっておらず、大きなニュースにもなっていない。

　注目された前田健太（広島）が来季のメジャー行き断念した後で、マーケットに出ている日本人選手の中にスターレベルと考えられている者がいないという事情がある。イチローにしても、もはやレギュラー当落線上の存在であり、黒田に至っては現役続行の意思すら定かでない。そんな彼らが、激しい補強戦線の話題から取り残され気味なのも仕方ないのだろう。

　より注目度、知名度の高いイチローよりも、青木の去就の方が早く決まる可能性は高いのではないか。

　老舗『スポーツ・イラストレイテッド』誌のベン・ライター記者が、毎年オフ開始早々に発表する“ライター５０”という名物企画がある。その年のＦＡ選手のベスト５０を紹介し、行き先と契約内容を予想するもの。各チームの出足が速い今年は、そこでランキングされた５０選手中３３人の所属先がすでに決定した。

　残っている野手の中で、最上位は１５位にランクされたアスドルバル・カブレラ（ナショナルズＦＡ）、それに続くのが１７位の青木である。だとすれば、そろそろだろう。
　古巣ロイヤルズはアレックス・リオス（レンジャーズＦＡ）と契約したため、青木との再契約の余地はなくなった。それでも外野陣に空きのあるオリオールズ、レッズ、ジャイアンツなどが獲得候補として挙がっている。今季打率２割８分５厘、出塁率３割４分９厘と好数値を残した３２歳は、スターではなくとも、一定以上の評価はされている。レギュラークラスの役割を期待され、遠くないうちにどこかのチームとまずまずの好契約を結ぶと思われる。

　上記のライター記者は、“ライター５０”の番外編として、当初のランキングには含まれず、現時点まで売れ残っている選手のベスト１１を１２月１８日付け（現地時間）で発表した。その中で、イチローは８位にランクされている。

「イチローは野手としてメジャー最年長、投手まで含めてもラトロイ・ホーキンス（ロッキーズ）、バートロ・コローン（メッツ）に次ぐ３番目の高齢選手となりそうだ。イチロー本人は引き取り手がある限り永遠にプレーしたいと思っているように見える。まだ出塁、盗塁もできるし、３つの外野のポジションをすべて守れる。ロースターの層の薄いオリオールズが行き先になるかもしれない」

　そんな解説文にある通り、今オフ中にニック・マーカーキス、ネルソン・クルーズを失ったオリオールズをイチローの新天地候補に挙げる声は根強い。ただ、将来は殿堂入り確実のイチローも、現時点では“第４の外野手”が適任と目されているのは事実。それだけに、各チームのレギュラー級が固まった後、来年のキャンプ入りあたりまで契約を後回しにされてしまっても不思議はない。