前半戦の総出場時間チーム3位の本田圭佑 「脇役」に徹して得た新たなスタイル
大半の時間帯でローマが主導権を握る
14年最後の試合となったローマ戦はスコアレスドロー。本田は先発出場も、後半途中にアルメロが退場した影響を受けピッチを後にした 【Getty Images】
ボール支配率はローマ59%、ミラン41%。パス成功数は420対229。コーナーキックは10対2。シュートは15対9。これらのスタッツが示している通り、大半の時間帯でローマが主導権を握って押し込むという展開となった。ローマのルディ・ガルシア監督は試合後、「勝ち点2を落としたようなもの」と苦々しく振り返り、ミランのフィリッポ・インザーギ監督は「ローマとここまで互角に戦えるとは、つい3カ月前には思いもよらなかった」と満足げに胸を張った。今シーズンのセリエAにおける両チームの“現在地”は、両監督のこのコメントにはっきりと表れている。
とはいえ、ミランに勝機がなかったわけではない。ほぼ守勢一方で前半45分を過ごした後、後半最初の20分ほどは、逆に攻勢に立ってローマ陣内で試合を進める展開になったからだ。それが途切れたのは後半25分、左サイドバックのパブロ・アルメロが不用意なファウルで2枚目のイエローカードをもらって退場になるというアクシデントが起こったためだった。
残念だったのは、この退場劇のとばっちりをもろに受けたのが、ほかでもない本田圭佑だったこと。この試合もスタメンでピッチに立ち、後半に入ってチームが攻勢に転じると同時にプレー機会を増やして攻撃に絡んできつつあっただけに、アルメロの穴埋めに投入されたセンターバック、アレックスと交代でピッチを去らなければならなかったのは、本人としても不本意だったに違いない。
力の差を自覚した試合への臨み方
前線を自由に動き回って敵最終ラインをかく乱しチャンスを作り出すメネスを中核に据え、MF的なセンスとフィニッシュに絡む決定力を合わせ持つ本田とボナヴェントゥーラがそれをサポートするという組み合わせが、基本構成として完全に定着したという印象である。フェルナンド・トーレスとステファン・エル・シャーラウィは、またもやそろってベンチスタートとなった。
ただし、顔ぶれは同じでもピッチ上の布陣は相手に合わせて微調整されている。前節ナポリ戦では、本田とボナヴェントゥーラをトップ下として内に絞ったポジションに置く4−3−2−1システムが使われたのに対し、この試合ではその2人がワイドに開く通常の4−3−3が採用されていた。
これは、セリエA屈指の攻撃力を持つローマに対して、守備の局面では2人のウイング(本田とボナヴェントゥーラ)も中盤のラインまで戻した実質4−5−1の布陣で対応したため。インザーギ監督は、首位ユベントスとの直接対決でもそうしたように、格上相手に正面から互角の戦いを挑むよりも、力の差を自覚して守勢に回り、まずは失点しないことに優先順位を置くという謙虚かつリアリスティックなアプローチでこの試合に臨んだというわけだ。
いきおい本田も、FWというよりもMFとして中盤のラインに加わり、自陣で守備に奔走する時間が長くなった。この日のミランの守備は、積極的にボールにプレッシャーをかけに行くのではなく、4DF+5MFの2ラインがコンパクトな陣形を保ってグラウンダーのパスコースを全てふさぎ、不正確なロングボールを蹴らせようという狙いを持っていた。本田も対面の左サイドバック、ヨゼ・ホレバスをマークしつつ、左ウイングのアレッサンドロ・フロレンツィ(あるいはジェルビーニョ)へのパスコースを切るポジションを取る。守備の局面でもサボることなくチームのメカニズムの中で機能する献身性は、インザーギ監督が本田を信頼して起用する大きな理由の一つである。
チームが守勢に回ったことも大きな理由だが、それにしても前半の本田はボールに絡む機会が少なかった。前半終了時点でのスタッツを見ると、攻撃でのプレー機会はわずか10回。自陣右サイドを中心にパス成功7本、失敗2本、そして前半2分に放った挨拶代わりのような弱いミドルシュート、それで全てである。イタリアではよく、プレー機会の少ない選手を指して「試合に入ることができない」という表現が使われるが、前半の本田はまさにその典型だった。
その理由はシンプルだ。前節ナポリ戦のレビューでも触れたことだが、ミランの攻撃は、左インサイドハーフのリッカルド・モントリーヴォ、左ウイングのボナヴェントゥーラ、そして中央から左に流れてくるメネスという3人を経由する左サイドのルートに大きく偏っているのである。