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“日本一”中嶋一貴が見たF1と可夢偉
スーパーフォーミュラ王者は何を思う
中嶋一貴は2008年から2シーズンにわたってF1に参戦した経験を持つ。その目に、今季のF1、また小林可夢偉はどのように映ったのだろうか
中嶋一貴は2008年から2シーズンにわたってF1に参戦した経験を持つ。その目に、今季のF1、また小林可夢偉はどのように映ったのだろうか【スポーツナビ】

 中嶋一貴(トヨタ・レーシング)は今シーズン、スーパーフォーミュラ(SF)で2年ぶり2度目のチャンピオンに輝いた。思うようにレースを展開できない苦しい時期もあったが、中嶋は冷静に「状況を受け入れ」、ベストを尽くすことで最後は速さを取り戻した。最終戦までもつれたチャンピオンシップでは、レース2でポール・トゥ・ウィンと圧勝。自らの力を証明し、“日本最速”王者に返り咲いた。


 その中嶋は、かつてモータースポーツ最高峰の舞台、F1に挑んだ。あれから5年、今シーズンはレギュレーション変更もあり、大きく様変わりした。F1が今なお世界トップのドライバーが集まる場に変わりはない。しかし……。スーパーフォーミュラ王者に、現在のF1、またそこで苦しんだ小林可夢偉はどのように映ったのだろうか。(取材日:12月5日)

SFは一番楽しいフォーミュラレース

中嶋は今季2年ぶり2回目のスーパーフォーミュラ王者に。「世界で一番楽しいフォーミュラレース」と断言する
中嶋は今季2年ぶり2回目のスーパーフォーミュラ王者に。「世界で一番楽しいフォーミュラレース」と断言する【Getty Images】

――スーパーフォーミュラについてお聞きします。今シーズンのスーパーフォーミュラはクルマでいうとフルモデルチェンジをしたようなもので、大きく車両が進化しました。今年のF1に限って比較すれば、コーナリングではF1マシンより速いと評判です。


 そうですね、速いと思います(笑)。また高速道路での例えになりますが、まっすぐ走る分には今年のF1は非常に速いです。それが峠道になると、スーパーフォーミュラの方が速くなる。どちらが速いというより、クルマのキャラクターが違うと思ってもらえればいいかと思います。


――スーパーフォーミュラは、よりドライバー勝負の世界だと。


 僕たちドライバーにとって、ライバルとの違いを出す部分は、ブレーキを踏み始めるポイントからステアリングを切り込んで立ち上がる部分までです。そこが運転していて一番面白い。その性能が高いスーパーフォーミュラは、おそらく世界で一番楽しいフォーミュラレースじゃないかと。乗っていて楽しく、かつ速い(笑)。


――2年前は最終戦でチャンピオンに輝き、今年も最終戦で王座に就きました。より競争が厳しいカテゴリーと言えるのでしょうか?


 基本、全ドライバーが同じマシンに乗ります。どのような味付けをして性能を引き出すかという違いの勝負ですから、ラップタイムで2秒も離れることはありません。ドライバー、エンジニアなどが協力して戦えたかどうかを競う、より人間同士の勝負だと思います。マシンを言い訳にできないですね。


――昨年はチャンピオンを逃し、今年は返り咲きました。違いは何だったのでしょうか?


 シーズン中、うまくマシンの性能を引き出せない時期がありました。状況が苦しいときは、人間が無理をしがちです。昨年はそうした失敗がありました。今年は自分の軸を保ちつつ悪いなりにも戦うことで、結果として表彰台に上るレースがありました。大事な最終戦で速さを取り戻すことができて、チャンピオンになれたと思います。


――ジャンルは違いますが、野球の日本シリーズなどでは「3敗までできる」と言った監督がいました。我慢が大切という部分が共通しているのでしょうか?


 やはり相手があっての勝負なので、自分は100%の力を出しても負けることもあります。逆に100%じゃないのに勝つこともある。ベストじゃないときに頑張りすぎて、70%の力しか出せないマシンなのに、結果としてそれ以下にしてしまう。それは避けたい。70%の力をずっと引き出すことで、結果として80%や90%の成果が得られることもあります。状況を受け入れて、その中でベストを尽くそうというのが大事ですね。

F1に魅力を感じない、その理由

――モータースポーツがチームスポーツだからですね。


 そうなんです。僕一人が戦っているわけじゃない。レースは基本的に考える時間がないですから(笑)。起きた状況は受け入れて、その先を見据えて戦うことが大切だと思います。これはチーム監督である関谷(正徳)さんに昔教わったことなのですが、スタートで2〜3台に抜かれたとして、1コーナーで取り返すことはできない。状況を受け入れて、頭を切り換えて、1台1台を抜いて取り返すように考えなくてはいけないと。


――今シーズン、印象に残るレースは?


 第3戦の富士(予選4位/優勝)と第4戦のもてぎ(予選5位/決勝7位)ですね。この2レースはどちらも同じようなマシン状態でした。100%を引き出せないまま予選を終えています。でも、レース展開の違いで結果は優勝と7位でした。どちらも気持ちを切らさずに走った結果です。良いときもあれば、そうでもないときもある……。


 昨年だと頑張りすぎてマシンを接触させたりもしました。結果として、気持ちを切らさずにポイントを獲得したのがチャンピオンシップにつながったと思います。僕は我慢強い性格ではなく、「えいっ!」と行きたくなることがあるのですが、そこを我慢したことが昨年と違います。


――F1時のチームメートであるニコ・ロズベルグが今年はルイス・ハミルトンと最終戦までチャンピオン争いを繰り広げました。彼を見ていたりすると、もう一度F1に挑戦したいと思いますか。それと、自身が乗っていたころと大きく変わった今年のF1マシンに興味はありますか?


 ハッキリ言ってしまうと、あまり魅力を感じていません。先ほど説明した通りですが、マシンとしての魅力がそこまで感じられないなと。もう1つ、現在のF1は、トップから7〜8人まで世界最高のドライバーが集まっている点は変わっていないと思いますが、下位チームのドライバーには、政治的な部分が表面化しすぎている印象があります。もちろん、昔からあった事実ですが、そこが大きくなりすぎて残念ですね。


 ドライバーにとって、F1が世界最高のシングルシーターである事実は変わりません。一方で、F1のトップを走るドライバーたちがみんなスーパーフォーミュラで戦ったら、それは非常に面白いんじゃないかと思います(笑)。

田口浩次

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