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男子マラソン復活へ続く手探り
求められるナショナルチームの地位向上
福岡国際マラソンで結果を残せなかった日本男子マラソン勢。ナショナルチームで強化を進めるが足踏み状態が続く
福岡国際マラソンで結果を残せなかった日本男子マラソン勢。ナショナルチームで強化を進めるが足踏み状態が続く【写真は共同】

 2015年に行われる北京世界選手権マラソン代表選考会の国内レース初戦となった、12月7日の福岡国際マラソン。期待されていたロンドン五輪とモスクワ世界選手権連続入賞の中本健太郎(安川電機)は、もうひとりの注目選手だった宇賀地強(コニカミノルタ)とともに、34キロ手前で4位集団から後退。最後は力尽きて2時間11分58秒で12位となった。日本人トップは4位の藤原正和(Honda)で2時間09分06秒。マラソン3回目の宇賀地も2時間10分50秒で9位と、日本男子マラソン界にとっては厳しい結果に終わった。

“ナショナルチーム”というプレッシャー

 日本陸上競技連盟ではマラソン強化の一環として4月にナショナルチームを編成。男子は12選手が選抜され、合同合宿を行うなどして底上げを図ってきた。

 宗猛男子中長距離・マラソン部長は「4月にナショナルチームができてから故障者3名を除けば9名がマラソンを走っているが、ギリギリ合格と言えるのはアジア大会2位の松村康平(三菱重工長崎)と3位の川内優輝(埼玉県庁)、悪条件だったニューヨークシティマラソンで25〜26キロから仕掛けたという今井正人(トヨタ自動車九州)くらい。あとはなかなかで、現状は『ウ〜ン……』という感じですね」と表情を曇らせる。


「今回は中本がナショナルチームに入って初めて(マラソンを)走ったけれど、彼は元々地味なイメージの選手だったのにここに来てバーンとクローズアップされたから、そのプレッシャーはあったと思いますね。本来のレース展開も集団の後方をリラックスしてスーッと走り、気がついたら『中本がいた』という感じだったけれど、今回は『ここでは行かないだろう』と思うようなところで集団の前に出て引っ張ったりしていましたから。彼の中にはナショナルチームの一員として『ここで行くしかない』というような責任感もあったのではないかと思いますね」


 今回日本人トップになった藤原には、ナショナルチームの中本に勝ってやろうという目標もあっただろうという。そんな面ではナショナルチームの選手たちも、相当なプレッシャーを感じており、なかなか結果を出せずにいるのでは、と。

 だがナショナルチームを作った背景には、そういうプレッシャーを乗り越えなければ五輪や世界選手権で結果を出せないという考えもある。そんな立場を経験する中でメンタル面でも開眼して強くなっていってほしいし、いくつもの壁をクリアしていった上で、3人の代表が選ばれるのが理想だと宗氏は言う。


「今年ナショナルチームを作ろうとなった時はそれまでの記録を参考にして12人を選びましたが、来年の世界選手権や16年のリオデジャネイロ五輪、20年の東京五輪を考えれば、暑さに強いというのも必要な条件になってきますね。だから今年は8月から9月にかけて17〜18日間の合宿をやりました。最初は気温の低い北海道・釧路で8日間くらい全員が同じ流れで練習をして状態をフラットにし、それから暑い士別に移動して科学的なデータを取りながら練習をしました。そこである程度明確なものも出てきました。そういうものもある程度のベースにしながら、これからの方向を作って行こうと考えています。ただ、その期間だけの練習ではまず無理ですから、各選手の所属先のコーチに私たちと同じ認識を持って頑張ってもらうしかないというのは確かです」

バトオチルの強さの陰に豊富な練習量

 福岡のレースを見れば、後半は風が強くなり見た目より悪条件だったということもあったが、30キロ過ぎにモンゴル出身のセルオド・バトオチル(NTN)が仕掛けた時に日本勢はひとりもついていけなかった。宗氏があとで選手に聞くと、「いっぱいいっぱいの状態で、つきたいけれどつけなかった」という者が大半だったいう。


「それだけバトオチルのスパートのタイミングが絶妙なところだったのかなとも思うけれど、今の選手たちは全体的に練習量が少ないので基本的なスタミナはかなり劣っているというのはあると思いますね。現在のバトオチルが師事するのは、以前旭化成で走っていた亀鷹律良監督ですが、彼は『バトオチルは昔の旭化成の練習をそのままできてますから』と話していますね。それだけの練習をやっている裏付けがあるから、あそこでスパートできたのだと思います。マラソンはやっぱりスタミナですから、5000メートルや1万メートルの延長ではなく、スタミナをつけた上でトラックのスピードを乗せていくというイメージでなければダメですね」


 今回期待された宇賀地もまだそういった部分はあるだろうという。「でも彼の場合は不器用で階段をひとつひとつ上がっていくタイプの選手ですから、これからマラソンの回数を積みながら結果を出してくると思います」と期待する。

折山淑美
1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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