“チャンスの場”で見た選手の想いと現実 JPFA第2回目トライアウトレポート

宇都宮徹壱

「例年に比べると動きが鈍い」今年の移籍状況

アマチュア相手の試合でのアピールに「相手が相手ですし、どう判断してもらえるかは分からない」と話した千代反田 【宇都宮徹壱】

 声援も拍手も聞こえないピッチでのプレーを終えた23名の選手たちは、熱いシャワーを浴びてから三々五々ミックスゾーンに現れる。通常の試合と異なり、われわれメディアだけでなくクラブ関係者やエージェントたちもまた、目当ての選手たちを待ち続けていた。とはいえ、メディア控室に貼られてあった関係者リストと比べると、選手に直接声をかける人の数も少なく限られていた。顔見知りのクラブ関係者に「誰か目当ての選手はいます?」と声をかけると「気になる選手はいますが……。ここでは情報交換がメインですね」という答えが返ってきた。誰もが様子見、といった雰囲気である。

 久々に会った知人のエージェントに、今年の移籍状況について聞いてみた。「例年に比べると動きが鈍いですねえ。このトライアウトが終われば、動きが出るかもしれません」とのこと。「玉突きの移籍が起こりやすいのがGKとストライカー。去年は西川(周作)が広島から浦和に移籍して、一気に玉突きが起こったじゃないですか。今年はGKの参加者が多いですが、そんなに大きな動きはないと思います。FWに関して言えば、豊田(陽平/鳥栖)次第ですかね。もし移籍ということになれば、あちこちで玉突きが起こると思います」

 ところで前述したとおり、今年の第2回トライアウトは主にJ1所属の選手に向けて行われた。しかし実際にフタを開けてみると、J1クラブの選手はたったの13名。シーズンが終わり、あちこちから契約満了のニュースが届く中、これだけの人数しか集まらなかった状況をどう見るべきなのだろうか。ある関係者は、最近の傾向として「トライアウトに出ることで、逆に自分の価値が低く見られてしまうと考える選手も少なくないようですね」と教えてくれた。

 確かにそういう考え方もあるだろう。とはいえ、第1回の参加者数74名は、昨年の70名をわずかながら上回っている。来年も2回行われるのか、それとも1回に戻すのかは分からない。が、必死で次の職場を求めている選手の数は常に存在するわけで、より多くのチャンスが与えられることをJPFAには望みたい。そしてこの日の参加者に、再びプレーの場が与えられることを、心より願う次第だ。

(協力:日本プロサッカー選手会)

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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