“超新星”堀口恭司、UFC3連勝の秘密 「簡単に考えられる奴が勝ち」

長谷川亮

会場がどことか気にしない

UFCデビュー後、無傷の3連勝を挙げている“超新星”堀口恭司にその強さの思考法を聞いた 【長谷川亮】

 来たる現地時間1月3日(日本時間1月4日)に行われる「UFC182」(アメリカ・ラスベガス)でUFC第4戦に臨む“超新星”堀口恭司。9月の日本大会でも初回TKO勝利を上げ一際鮮烈な印象を残したが、郷里の群馬へ空手の稽古のため帰省したところを現地でキャッチ。趣味であり貴重なリラックスタイムである釣りへと向かう途中、日本大会からその強さを生む思考法、そして次戦について尋ねた。

――9月の日本大会ではジョン・デロス・レイエスに初回TKOの快勝でした。自分がファン時代に見ていた、さいたまスーパーアリーナで実際に戦っていかがでしたか?

 あまり会場がどことか気にしないんですよね、自分。勝ったんで気分いいですけど、それぐらいというか、試合だけに集中して、いざ舞台に立ったら相手のことしか頭になかったので、よし勝った! 終わり! みたいな感じです(笑)。

――たしかに、さいたまスーパーアリーナだからと浮き足立っているようでは、ダメなような気がします。

 この会場だからどう、とかそういうのはないです。ただ、一番思ったのは日本大会はすごく調整が楽だなっていうのは感じました。自分の知ってるスーパーとかにも行けるし、どこかへ行くのにいちいち人に聞いたりしなくてもいいし。海外だと周りが分からないから、あまり外にも出られないじゃないですか。でも、日本だったら暇なとき散歩とかにも行って気晴らしになるし、そういうのが全然違って楽でした。時差もないし。

――見ている側はあまり気にしないものですが、試合直前のストレスや時差の問題が海外と日本で全く違うのですね。

 大体海外へ行ったら、もう2、3日はほぼ寝てるんです。そうすると時差ボケが取れます。

――その合間に体を動かして、時差に体を慣らす感じですか?

 いえ、自分の場合はもう徹底して寝てます(笑)。3日ぐらいはほぼ寝ていて、そうすると(時差ボケが)取れるんです。

――なるほど、それが“堀口式時差解消法”であると。

 でも、水垣(偉弥)さんもほぼ寝てるって言ってましたよ。もう、そこまでいって動いたりしたってほとんど変わらないですから(苦笑)。

集中するために休みを週2

ことし9月に行われたUFC日本大会で、1R・TKO勝利を挙げた堀口は両手を挙げて喜びを表現した 【花田裕次郎】

――日本大会では空手時代の恩師がセコンドについてくださったそうですが、いかがでしたか?

 やっぱり心強いし、自分のやるべきことを的確に言ってくれます。先生は試合になるともう何も言わないんですけど、アップの時に「恭司、これ、これ、これ」って言ってくれるので、それがすごく良かったです。

――では、今後も先生がセコンドについてくださるのでしょうか。

 先生は飛行機が好きじゃないので、日本だったらまたついてくれると思います。「あのデカい鉄が飛んでるのが理解できないから、俺は絶対海外には行かない」みたいに言っていました(笑)。試合はちょっと空振りが多かったので、もっとコンパクトにできたらよかったなって思います。

――短い試合でしたがケガはなかったですか?

 試合ではあまりケガをしないんです。試合でケガしたのってイアン戦(=イアン・ラブランド戦、12年12月判定勝ち)の時にポコって腫れたぐらいじゃないですかね。ほんとあれぐらいで試合でのケガはなくて、ケガはほぼ練習です。試合は年に数回、しかも1回15分でそれを集中してやればいいですけど、練習は毎日やってることで、そっちの方が当たり前に多いし、そりゃケガのリスクがありますよね。練習も以前は休みを週1にしていたんですけど、それだと次の週が全然集中できなかったり、抵抗力が落ちて菌が体に入ったりしちゃうので、今は休みを週2にしています。

“勝ちたい”ではなく“自分から攻める”

“勝ちたい”ではなく、“自分から攻める”をモットーに勝利を積み上げてきた 【花田裕次郎】

――試合での自分がやるべきこと・そうでないことの見極めもそうですが、堀口選手は練習におけるそうした見極めもとても明確であるよう思います。

 本当に疲れている時、週の中で水曜日とか木曜日は結構疲れてくるんです。そうするとやっぱり集中力がなくなってくるんで、その時は短時間で何をするかなんです。たとえば息上げをダラダラやるとかじゃなく、短時間で集中できるもの、やることを明確にして、それを何回かやって終わりにします。自分でやることを明確にしてやらないと練習にならないというか、意味がなくなっちゃうんです。バッとやってバッと終わらせます。自分はあまりダラダラやらないです。

――そうした見極めがハッキリしていることに加え、とても的確だと思います。

 でもそれは自分が勝ってるから的確って言えるだけであって、すごく弱ければ「お前ダメじゃん」ってなる訳ですから。

――「なんでそんなに早く切り上げているんだ」と言われることにもなりかねないと。

 そういうことです。結果が出なければ誰も認めてくれないし、そのやり方で合ってるかどうかは分からないから難しいです。でも、どのやり方が合ってるか分からないけど、試合に関しては自分から攻めることですよね。たかが15分しかないのに相手のペースを見てたら終わっちゃって判定で負けるんですから。だったら自分からどんどん作って、攻めなきゃって思います。要はそうやって簡単に考えられる奴が勝ちですよ。だって難しく考えたって労力を消費して、それにハマらなかったら“こんなに考えたのにダメだったのか”って落ち込むだけじゃないですか。だったら単純に考えて“あ、これダメだったんだ。じゃあ、次”ってなるじゃないですか。そうやって単純に考えた方がいいですよ。外国の選手が強いのは、きっとそうやって単純に考えられるからだと思います。“勝ちたい”だから“自分から攻める”、じゃないですか。

――できるだけ削ぎ落としてシンプルに考え、試行したやり方がダメならまた新しい方法を考える、そうした思考法や実践の仕方が堀口選手の強さの源にある気がします。

 だってやってることは、結局殴りと蹴りと倒し=テイクダウンですから。

自分のやりたいことをやるスタイル

釣りを楽しんでいるときの堀口は試合で勝利した時のように顔をほころばせる 【長谷川亮】

――日本大会に続く次戦が3カ月半というスパンで来年初頭に決まりました。これについてはいかがです?

 間隔はいい感じだし、試合が決まったなっていう感じで、そこは何もないです。仕事だなって。

――対戦相手はUFCの登竜門番組「TUF」出身で、現在UFCフライ級ランキングで14位につけるルイス・ゴーディノです(※堀口は現在ランキング11位)。

 やっぱり強いですね。もうUFCはどの選手とやっても強いですから。だって要はどこかから引き抜かれてきた奴か、もしくは育ってきた奴で、次の相手は育ってきた方ですけど、そりゃ強いですよ。

――では、もう毎回強い相手だし、そこは「試合だな」というぐらいで、そんなに試合前の心持ちは変わらないと。

 そうですね、相手に集中するぐらいで、それぐらいです。自分は対戦相手がこうだからこうって合わせるスタイルじゃなく、全部自分のやりたいことをやるっていうスタイルなので。人によっては“相手はこれが不得意だからこれで攻めよう”とか合わせる人もいますけど、でも、自分はそういうタイプじゃないので。今回もいつも通り、試合に集中するだけです。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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