江幡ツインズ兄・睦が貫禄のKO勝利=元ラジャ王者・石井宏樹が引退セレモニー

長谷川亮

OPBF挑戦経験の挑戦者と対戦

1RKO勝利の睦は双子の弟・塁と伊原代表と勝利の記念撮影 【長谷川亮】

 新日本キックボクシング「SOUL IN THE RING XII」が14日、東京・後楽園ホールで開催され、メインに新日本キックが誇るチャンピオンツインズの兄・江幡睦(むつき)が登場した。

 今年4月にWKBA世界バンタム級王者となった江幡は、ボクシングで東洋太平洋タイトルマッチに臨んだ経験を持つチャーンサックノーイ・サックルンルアンと対戦した。

 情報が十分でなく、サウスポーであったチャーンサックノーイにやや戸惑ったかの様子も見られた江幡だが、まずはキレのある左右ローを見舞って様子を見る。パンチを得意とするチャーンサックノーイは前進してフックを放ちこれを被弾した江幡だが、次第に「距離が分かった」と言い、逆に前へ来たところを左フックや右ボディなどでとらえ始める。

ラジャ王者と他団体との対抗戦へ

相手の情報がなく、やや戸惑った睦だが、タイミングをつかむと、左ボディ、右ミドルをまとめて相手をマットに沈めた 【長谷川亮】

 チャーンサックノーイが以後も前に来ることで早々に距離とタイミングを掴んだ江幡は、得意とする左ボディを前進してきたところへカウンターでグサリ。チャーンサックノーイが苦悶の表情で崩れ落ちるところへ右ミドルもダメ押しし、1R1分58秒、ノックアウトで2014年の戦いを締めくくった。

 試合後はもはや恒例行事となったように弟の塁と記念撮影を行った江幡は、悲願であるラジャダムナン王座の奪取を来年の目標として語るとともに、1月から新日本キックとNJKFの王者クラスによる対抗戦が始まることから、他団体選手との対戦にも興味を示した。

石井、18年の現役生活に別れ

外国人として初めてラジャダムナン王座の防衛に成功するなど、キックボクサーとして数々の実績を作ってきた石井宏樹の引退セレモニーが行われた 【長谷川亮】

 また、今大会ではタイの殿堂ラジャダムナンスタジアムでスーパーライト級王者に輝き、外国人として初めて王座防衛を成功させた石井宏樹の引退式も行われた。

 ダイエットのため15歳でキックボクシングを始めたという石井は、96年に17歳でプロデビュー。2000年に新日本キックのライト級王座を獲得すると、08年にはTOUITSU初代ライト級(62kg)王者決定トーナメントを制して優勝を果たし、10年7月には試合で小腸破裂の大怪我を負うもこれを乗り越え、11年10月にラジャダムナン王座を獲得。同王座は2度の防衛を成し遂げ、今年2月ゲーオ・フェアテックスに2RKOで敗れた試合を最後に18年に及ぶ現役生活に別れを告げた。

「何一つ悔いはない」

「血と汗がしみ込んだリングで声援をもらうのが大好きだった」という後楽園で引退の10カウントゴングを聞いた 【長谷川亮】

 ゲーオ戦で「完全燃焼」したという石井は、エキシビションは行うことなくスーツ姿で引退式のリングに登場。交流のあるHIROYA、宍戸大樹、長南亮から花束を贈られると笑顔と握手で応え、新日本キック・伊原信一代表から「引退は撤回しろよ」と言葉を掛けられると苦笑いを浮かべた。

 引退式の最後でマイクを取った石井はデビューから今日までの日を振り返り、「自分のキック人生、何一つ悔いはありません。本当に長い間、ありがとうございました」とファンに挨拶。目を閉じて10カウントゴングを聞くと、キックボクシングそのものへの感謝を表すように4つのコーナーへ向かいそれぞれ丁寧に礼をし、静かにリングを後にした。

HIROYA、宍戸大樹、長南亮や伊原信一代表らと引退セレモニーで記念撮影する石井宏樹 【長谷川亮】

以下は石井のコメント。

■石井「これからは指導者として後輩たちに声援を送る」

 今まで諸先輩方の姿を見てきました。ですが、こうして自分がこの場に立ってみると、とても感慨深いものがあります。自分は15歳でキックボクシングと出会い、夢を持つことができ、そして何よりも皆さまと出会えたことが幸せに思います。

 17歳の時にこのリングでデビューし、21の時にこのリングで日本チャンピオンになり、32歳の時にこのリングで念願であったラジャダムナンスタジアムのベルトを巻くことができました。

 これも散々わがままを聞いてくれた伊原代表をはじめ、自分に携わってくれた全ての方々のおかげです。本当にありがとうございました。

 自分はこの汗と血と涙がしみ込んだこの後楽園ホールのリングの上で、皆さまから声援をいただくことが大好きでした。これからは試合という形で皆様から声援をいただくことはできませんが、これからは指導者として後輩たちに声援を送っていきたいと思います。指導者としてはまだまだ未熟者ですが、今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します。

 これからも自分が育った新日本キックボクシング協会をどうぞよろしくお願いします。

大会結果

 そのほか、大会の全試合結果は以下の通り。

■新日本キックボクシング「SOUL IN THE RING XII」
12月14日(日)東京・後楽園ホール

<第13試合 ダブルメインイベント第2試合 日泰国際戦 54.5kg契約 3分5R>
○江幡 睦(伊原道場/WKBA世界バンタム級王者)
(1R1分58秒 KO) 
●チャーンサックノーイ・サックルンルアン(タイ/タイ国ボクシング元ライトフライ級1位、ラジャダムナンスタジアム認定ボクシング・ライトフライ級3位)

<第12試合 ダブルメインイベント第1試合 日本フェザー級タイトルマッチ 3分5R>
○内田雅之(藤本ジム/日本フェザー級王者)
(判定2−1)
●瀬戸口勝也(横須賀太賀ジム/同級1位/挑戦者)
※49−48(内田)、49−48(瀬戸口)、49−47(内田)
※内田が4度目の防衛に成功

<第11試合 セミファイナル ヘビー級 3分3R>
○プリンス・アリ(イラン/志村道場/前HEATキックルール ヘビー級王者)
(判定3−0)
●松本哉朗(藤本ジム/日本ヘビー級王者)
※30−27、30−27、29−27

<第10試合 セミファイナル 日本ウェルター級 3分3R>
○緑川 創(藤本ジム/前日本ウェルター級王者)
(判定3−0)
●渡辺健司(伊原稲城/日本ウェルター級王者)
※49−48、50−48、49−47

<第9試合 セミファイナル 日泰国際戦 63.5垠戚鵝。格3R>
△石井達也(藤本ジム/前日本ライト級王者)
(判定ドロー)
△イソラサック(タイ/元ルンピニースタジアム認定フェザー級王者)
※29−29、30−29(イソラサック)、29−29

<第8試合 セミファイナル 日本フライ級 3分3R>
○HIROYUKI(藤本ジム/日本フライ級王者)
(2R2分47秒 KO)
●がってん古川(治政館/日本フライ級3位)

<第7試合 日泰国際戦 73kg契約 3分3R>
△斗吾(伊原道場/日本ミドル級1位)
(判定ドロー)
△サンムック・キクチジム(タイ)
※28−28、29−28(サンムック)、28−27(斗吾)

<第6試合 日本ミドル級 3分3R>
○本田聖典(伊原道場新潟/日本ミドル級4位)
(判定3−0)
●青木克典(トーエル/日本ミドル級7位)
※三者30−26

<第5試合 日本ライト級 3分3R>
○春樹(横須賀太賀ジム/日本ライト級4位)
(判定3−0)
●カズ宮澤(フリー)
※30−28、30−29、30−28

<第4試合 日本ミドル級 3分2R>
△徳王(伊原道場)
(判定ドロー)
△曽根修平(武湧会)
※三者19−19

<第3試合 58kg契約 3分2R>
○里見柚巳(横須賀太賀ジム)
(判定3−0)
●雷神浜田(野本塾)
※20−19、20−18、20−19

<第2試合 日本フェザー級 3分2R>
○本間博行(伊原道場新潟)
(判定3−0) 
●金子大樹(ビクトリージム)
※19−17、19−18、20−17

<第1試合 日本スーパーライト級 3分2R>
○斉藤亮二(松栄塾)
(判定3−0)
●中田憲四郎(藤本ジム)
※20−19、20−18、20−19
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント