イチロー去就問題、決着はキャンプ中? 控えでは遠ざかる2つの大記録

杉浦大介

好印象を残して去るNY

誰もが驚いたヤンキース移籍からおよそ2年半。イチローの新天地が決まるにはまだ時間がかかりそうだ 【写真:ロイター/アフロ】

 2012年夏、誰もが驚いた電撃トレードの直後、イチローとヤンキースの関係はビッグネーム同士の“期間限定大恋愛”で終わるかと思われた。

 しかし、守備力、スピードを備えた外野手を欲していた当時のヤンキースに、優勝争いの緊張感を味わうことでみずみずしさを取り戻したイチローは予想以上のハマり具合を見せる。結果的に、2年半に渡って続く立派な“ニューヨーク・ロマンス”となった。

「12年オフにFAになった時点で2年契約を結び、最後の1年(14年)は余計だったのかもしれない。それでも、今季にしても打率2割8分4厘。トータルで考えて、イチローはヤンキースファンに好印象を残して去っていくと思う」

 ある地元紙記者は、背番号31番のニューヨークでのキャリアを好意的に総括してくれた。12年の移籍後には67試合で打率3割2分2厘と打棒を復活させ、ア・リーグ優勝決定シリーズ進出に大きく貢献した。13年にはヤンキースタジアムで日米通算4000本安打を達成し、球団史に残るハイライトシーンを演出した。

 今季も100試合以上出場した選手ではチーム内打率1位、地元を揺るがした人気も最後までほとんど変わらなかった。ただ……。それほどポジティブな時間を過ごしながら、上記の地元記者も、「好印象を残して去っていく」と述べているのも見逃せない。

米国でも衰えない存在感

 ブレット・ガードナー、ジャコビー・エルズベリー、カルロス・ベルトランが契約中なのに加え、オフ開始直後にはクリス・ヤングとも再契約し、外野に空きはなくなった。そんな事情ゆえ、イチローのヤンキースからの移籍は地元でも確実と目されているのは紛れもない事実である。

 そうなると、注目は41歳となったスピードスターが来季はどのチームでプレーするのかということ。8日(米国時間)から始まるMLBのウインターミーティングでも、日本のファン、メディアの興味はそこに注がれるのだろう。

「来年メジャーでプレーすることを決意している。どの球団かということは、野球は個人スポーツでないので分からない。誰かがプレーする機会を与えたいと思ってくれなければならないが、私はどんなことをしてでもプレーする」

「MLBネットワーク」で11月3日に放送された人気司会者ボブ・コスタスのインタビュー番組に出演した際、イチローはそう言い切って話題を呼んだ。こういった番組で取り上げられること自体が、いまだ衰えぬ存在感の証明ではある。

 もっとも、だからといって今冬を通じてその去就が話題になるかといえば、もちろんそんなことはない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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