カナロアに続け!香港スプリント3連覇へ=スノードラゴンが秘める未知の可能性

JRA-VAN

3大難関レース、香港スプリント

元祖二刀流のアグネスデジタルが香港Cを制しており、スノードラゴンにも好勝負の期待がかかる 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 ロードカナロアの香港スプリント連覇から早1年。この大偉業は未だに競馬ファンの間で語り継がれるほどだ。なにせ、日本馬が優勝することは困難と言われた3大難関レース(他は凱旋門賞、BCクラシック)の一角である香港スプリントをただ普通に制するだけでなく、連覇してしまったのだから桁が違いすぎる。それもいとも簡単に……。これで日本の競馬ファンが「香港スプリント=簡単に勝てるレース」と思ってしまうなら、それは大きな間違い。ロードカナロアが規格外だったということに過ぎないからだ。

 今年はスノードラゴン、ストレイトガール、リトルゲルダの3頭が12月14日の香港スプリントに出走予定。日本馬の同レース3連覇を目指すことになる。ストレイトガールは高松宮記念3着、スプリンターズS2着と短距離G1で好走。リトルゲルダもG1出走経験こそないが短距離重賞2連勝中と日本を代表するスプリンターに成長しつつある。しかし、特筆すべきはスプリンターズSを制して国内短距離王の座まで登りつめたスノードラゴンだろう。

千二ならば芝・ダート不問

 スノードラゴンは元々、ダートの短距離戦線を主戦場にしていた。デビューから3戦連続芝のマイル戦で2着と勝ち切れなかったことからダート路線に転向。初勝利となった4戦目がダート初戦となった訳だが、そこで見せた彼のパフォーマンスはあまりにも強烈だった。2番手追走から直線早めに抜け出し、最後は2着以下に6馬身差をつけて圧勝したのだ。さらには続く5戦目もダートの短距離戦で3馬身差の快勝。この流れならば誰が見てもダート適性の方が高いと判断するだろう。こうしてスノードラゴンのダート馬としてのキャリアがスタートした。とは言え、ダート路線に転向したからといってもイマイチの成績が続いてしまう。3勝目を挙げたのは2勝目から1年後。その後も好走こそ続けたものの勝ち切れないレースが続き、4勝目はそこから11か月後となってしまう。この時点でスノードラゴンが後にスプリンターズSを制して香港へ遠征するとは誰も想像すらしなかっただろう。

 そんな中で新たなる転機が訪れることになったのは2014年初春。スノードラゴン陣営は高知で行われる交流重賞・黒船賞への出走を希望していたが、補欠の4番目ということで断念。もう一度、芝でのレースを試したかったという事情も重なり、阪急杯かオーシャンSへの挑戦が決まった。ここまでの成績を見ると中山では芝・ダートを問わず10戦5勝、2着3回、3着1回、4着以下1回と抜群の相性を誇っていたことから自然にオーシャンSへの出走となる。

 オーシャンSでは11番人気ながらも後方からの追い込みで2着と健闘。元々、芝適性が無かった訳ではないが、馬自身が成長して芝の一線級を相手にしても互角に戦えることを証明した。続く高松宮記念では後方から追い込んで、前を行くコパノリチャードを捕えることはできなかったものの、2着でフィニッシュ。人気のストレイトガール、ハクサンムーンには先着し、この一戦で関係者もファンもスノードラゴンは1200mであれば芝、ダート問わず走る馬であることを認識させられた。

力のいるシャティンの馬場は合う

 ここから彼の二刀流生活が始まったことは言うまでもない。交流重賞・北海道スプリントC、キーンランドCとダート、芝の短距離重賞を使ってスプリンターズSへ出走。今年は中山競馬場が改装工事のため、得意の中山でなく新潟でのスプリンターズSとなったが、成長著しい今のスノードラゴンにとって、それは関係のないことだった。いつものように後方待機から直線勝負に打って出ると、最後は前を行く馬群を一気に交わして先頭でゴール。何と芝での初勝利が初重賞制覇に加えて初G1制覇となった。そして、陣営は海外へと視線を向けることになる。初めて重賞を勝った馬がいきなり海外挑戦というのは荷が重いという声もあり、それはもっともである。

 しかし、プラス要素が結構ある。スノードラゴンにとってシャティンコースは日本のどのコースよりも適していると思えるからだ。シャティンの芝コースは欧州に近いものがあり、日本よりも芝が深く、力のいる馬場。ダートでも走れるパワーを備えたスノードラゴンにとっては願ったり叶ったり。追い込み一辺倒のように思われがちの同馬だが、かつては先行策から抜け出すレースもこなしていたことから、先行有利とされているシャティンコースでも対応できる。それに何と言っても未だに底を見せていない感もある。厳しいレースになることは間違いないが、それをも凌駕する未知の魅力を備えていることも確かだ。日本馬による香港スプリント3連覇を期待したい。

(photo & text by Kazuhiro Kuramoto)
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