ホッコータルマエ、ドバイ切符は譲れない=“叩き上げ”が今年こそ“統一王者”へ

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復活の兆しを見せているホッコータルマエ、今年こそJRAGIを制し統一王者となりたい 【netkeiba.com】

 今年から中京に舞台が移り、その名称も変わったダートの頂上決戦チャンピオンズカップ。第1回を飾るに相応しい、そうそうたるメンバーが顔を揃えた。その中でも、悲願のJRAGI制覇を目指して、日々鍛錬しているのがホッコータルマエだ。5つの交流GI勝利という勲章に加え、JRAGIを制して統一王者になれるのか――管理する西浦勝一調教師に、胸の内を語ってもらった。(取材・文:赤見千尋)

ターニングポイントは佐賀記念

昨年のJCダートはゴール前で2頭に差され無念の3着だった(左・赤帽がホッコータルマエ) 【netkeiba.com】

 昨年のジャパンカップダートでは、並み居る強豪を抑えて1番人気に支持されたホッコータルマエ。それもそのはず、2月の佐賀記念を制した後は、5連勝で帝王賞を勝ち、一気にダート王者へと上り詰めた。休み明けの南部杯こそエスポワールシチーの2着だったものの、続くJBCクラシックでは圧倒的な強さで逃げ切って見せ、押しも押されもせぬ最強馬となったのだ。ただ一つ足りないのは、JRAGIの称号だけ。その悲願を背負い、直線で先頭に立ったホッコータルマエだったが、惜しくもゴール前で2頭に交わされ、2年連続の3着に敗れた。

「悔しかったですね。手が届きそうだっただけに、本当に悔しかった……。負けたレースをどうこう言っても仕方ないですけど、JBCクラシックを逃げ切ったことが、ジャパンカップダートでの早め先頭に繋がったんだと思います。展開もありましたし、先頭に立った途端、急にソラを使ってしまった。外の2頭は、かなり勢いが良かったですから」

 そう言って、悔しさを滲ませた西浦調教師。さらに、今年のフェブラリーステークスでも悔しい2着を味わっているのだ。

「東京大賞典、川崎記念と勝たせてもらって、ジャパンカップダートの悔しさはだいぶ晴れたんですけど。フェブラリーステークスでは、今度は前の馬(コパノリッキー)にやられてしまった……。あの時は、前に居るコパノリッキーよりも、後ろから伸びて来る馬を警戒していましたから。これが競馬です。GIはみんなが獲りたいレースですから、簡単には勝たせてもらえませんね」

 ダート王者と呼ばれながら、未だJRAGIに手が届いていないホッコータルマエ。ここに来て足踏みをしているようにも見えるが、これまでの成長過程を見てみると、必ずしも順調に上って来たとは言いがたい。昨年2月の佐賀記念を勝つ前は、『善戦マン』『勝ち切るにはワンパンチ足りない』というのが多くの評価だったのではないだろうか。

「佐賀記念を勝ったことは、大きなターニングポイントになりました。それまではいくら調子が良くても、賞金の関係で使いたいレースに使えなかったんです。だから、出走出来るレースありきで調整するしかなかった。でも佐賀記念を勝ってからは、しっかりと目標を決めてそれに向かってトレーニングが出来るようになって。そこからは、馬もハードなトレーニングによく耐えてくれて、本当に強くなりました」

使うことで強さを増す“叩き上げ”根性

JCダートの悔しさを晴らす快勝を東京大賞典で見せてくれたが…… 【netkeiba.com】

 賞金を加算し、目標が設定出来るようになったホッコータルマエは、ここで爆発的な成長を遂げたように見える。しかし、西浦調教師の評価は違っていた。

「この馬は、超エリートというわけではないし、天才というわけでもないんです。デビューした頃は、みんなが振り向くような馬ではなく、どこにでもいる馬の1頭に過ぎなかった。でも、毎日トレーニングを重ねて、1戦1戦レースで走るごとに、着実に力を付けていったんです。こういう成長を遂げる馬は、なかなかいないと思います。人間に例えるなら、まさに“叩き上げ”ですよね」

 ホッコータルマエは、とても真面目で一生懸命な性格だという。レース間隔を開けるよりも、使うことでさらに強さを増して来たのだ。戦いで消耗するのではなく、パワーアップしていくというのは、“叩き上げ”と言われるこの馬らしい成長過程だ。コツコツと努力を重ね、一歩一歩階段を上って、佐賀記念制覇が引き金となって一番上のステージまで上って来た。そして今、JRAGI制覇まで、あと1歩のところまで来ている。

「なんとしても今年は獲りたいですね。舞台が中京に替わることは全く問題ないです。コースを選ぶ馬ではないですから。コパノリッキーは強いですし、他にも新興勢力が台頭しているのはわかっています。ベテラン勢も健在ですし、かなりいいメンバーが揃いましたよね。でも、メンバーが強いからこそ、そこで勝ってJRAGIの称号を掴みたいです。それだけの力がある馬ですし、実績もある。ここを勝って、統一王者にしてあげたいです」

 現在のダート界の勢力図は、コパノリッキーを始めとした1つ下の4歳勢が強力な存在感を示している。ホッコータルマエも、フェブラリーステークス、そして前走のJBCクラシックでコパノリッキーに負けているのだ。しかし――4着となった前走のゴール後、西浦調教師の顔から、自然と笑顔がこぼれていた。その笑顔は、一体何を意味するのだろうか。

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