宇賀地強、福岡国際で勝利の方程式確立へ 日本代表入り目指し「粘りを発揮したい」

折山淑美

「日本の駅伝で負けるわけにいかない」

「世界で戦うのならば日本の駅伝で負けるわけにはいかない」という宇賀地。写真は14年1月のニューイヤー駅伝のもの 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 こう話す宇賀地には、国内でマラソンをするなら福岡でやりたいという思いがずっとあったという。これまで見ていた中でも、福岡は強い選手が集まりガチンコで勝負しているというイメージが強かったからだ。今年4月に監督との個人面談でその希望を伝え、ゴーサインももらった。

「もちろんニューイヤー駅伝(全日本実業団対抗駅伝)も走らなくてはいけないと思います。でも、うちのチームは少しでも体調が整っていなかったらメンバーから外されるような状況で、チームとしての縛りもないので、心配しないで福岡に集中できるというのはありますね。それに僕自身の中にも、早く(日本代表を)決めて終わらせたいというのもありますし……。夏にせっかくやった部分を一度落としてしまうというのも嫌だし、単純な面ではあまり先延ばしにすると風邪やインフルエンザなどのリスクも増えてくる。だったら早くやってしまった方がいいと思うんです」

 かつてのトップランナーは福岡に出場しても、当たり前のように全日本実業団対抗駅伝で結果を残していた。宇賀地自身の心の中にも、「世界で戦おうと思っていたら、日本の駅伝で負けるわけにはいかない」という気持ちもある。

「これから経験を積んで、レース中に相手の状態を見る目も養っていかなければいけないと思います。加えてかつての瀬古利彦さんのように、この展開なら勝てるというような自信を身につけていかなければいけないとも思いますね。そのためにも、福岡では今やっている練習が間違いないということを確立し、『これができていれば大丈夫だ』というものを見つけるレースにしたいですね」

福岡では最悪でも2時間7〜8分台を

 国内初戦となる福岡は一般参加だが、世界選手権代表権を取るためには順位はもちろん、タイムも必要になる。宇賀地は「日本陸上競技連盟の派遣設定記録の2時間06分30秒を突破できれば最高だけど、最悪でも2時間7〜8分台は出しておかないと。その後のレースもあるので、選考のテーブルにも乗らないから」と意識する。

「レースにパトリック・マカウ(ケニア)やマーティン・マサシ(スズキ浜松AC)などの外国勢がどういう状態でくるか分からないけれど、横浜国際女子マラソン(編注:田中智美=第一生命=がゴール直線の接戦を制し2時間26分57秒で優勝)のようにうまく見極めながら勝負しなければ、と思いますね。理想は30キロまでリラックスして走って、そこからは頑張らなくてはいけない。25キロから頑張らなければいけない展開になっても粘り切るしかないと思っています。それが自分の持ち味だと思っているし、世界選手権を見て可能性はそこだと思ったので、粘りを発揮したいなと思います」

 駒澤大時代から注目され、期待されてきた宇賀地の本格的なマラソン人生は、福岡から始まるはずだ。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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