F1は再び“キテマス感”を起こせるか? 鍵はホンダと“勝てる”日本人ドライバー

田口浩次

14年は技術的挑戦の幕開けに

ハミルトンの2度目となるワールドチャンピオン獲得で幕を下ろした14年のF1。技術的な挑戦、ベッテルの苦戦など見どころも多かった 【Getty Images】

 新世代のV6ターボ時代を迎えた2014年のF1シーズンが終わった。最終結果は11勝384ポイントを挙げたメルセデスのルイス・ハミルトンが2度目のワールドチャンピオンを獲得。最終戦までチャンピオンを争ったチームメートのニコ・ロズベルグは、レース途中にパワーユニットのトラブル(ERSと呼ばれるエネルギー回生装置起因のトラブルと見られている)から脱落、14位に終わった。約160馬力のエクストラパワーが得られるERSが作動しなくなり、次々と後続車にオーバーテイクされ、そのままレースをリタイアしても不思議ではなかったが「最後まで走りきる」と無線で伝え、レース後にチームメートを真っ先に祝福したロズベルグの毅然(きぜん)かつ真摯(しんし)な態度は多くの人に感動を与えた。

 今シーズンは1988年以来のターボエンジンの復活。さらには従来のKERS(運動エネルギー回生システム)ではブレーキ制動から得られる回生エネルギーでモーターを駆動させてエクストラのパワーを得る機構が発展し、エンジンの排熱からもエネルギーを回生する仕組みを追加。しかも、エンジンからの排熱エネルギー回生には上限を設けないことで、いかに熱エネルギーを効率良く回生するかという、世界でも類を見ない技術的挑戦の幕開けにもなった。

数々の物語を紡いだ面白いシーズン

 そうしたなか、昨年まで4年連続でタイトルを独占していたレッドブルは、ルノーが供給するパワーユニットの不具合から、ウインターテストをまともにすることもできず、同じくルノー製パワーユニットを選択したトロロッソ、ロータス、ケータハムも大いに苦しむことになった。今季、復活を狙っていたフェラーリはパワーユニットこそ大きなトラブルはなかったが、そのパワーは王者を争うには十分とは言えず、フェルナンド・アロンソとキミ・ライコネンという王者コンビであっても苦しいシーズンとなった。

 一方で、ターボの吸気部分と排気部分を離すことで熱エネルギー回生を飛躍的に向上させるアイデアを実装したメルセデス製パワーユニットを搭載したメルセデス、ウィリアムズ、マクラーレン、フォース・インディアは大いに躍進。なかでもメルセデスはワークスチームのアドバンテージを生かし、メルセデスとして初のワールドタイトル獲得を実現した。

 一見するとメルセデスが圧倒したシーズンだったが、14年前の00年にカートレースでチームメートとしてチャンピオンを争っていた2人が、再びチームメートとしてワールドチャンピオンを争ったストーリーであったり、4年連続王者となり、ミハエル・シューマッハの記録を抜く逸材はただ一人、と思われたセバスチャン・ベッテルがチームメートのダニエル・リカルドに苦しめられたり、さらには名門と言われ続けながら97年以降ワールドチャンピオンが生まれていない古豪ウィリアムズが復調の兆しを見せたりと、あくまでも個人的な見解ではあるが、近年まれにみる面白いシーズンだったと思う。

1/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント