米国で“ほとんど無視された”日米野球 高評価の日本野球だけに残念な開始時間

杉浦大介

カノの骨折も知らない米メディア

日米野球は米国でほとんど話題にならなかった。カノ(左)の骨折すら大きなニュースとして伝えられなかったという…… 【Getty Images】

「ロビンソン・カノが日本で骨折した? それは知らなかったな。いったいどういう状況だったんだい?」

 11月16日(日本時間17日、以下は現地時間)、NBAの取材現場で顔を合わせたニューヨークの某タブロイド紙のコラムニストは、驚いた表情で筆者に尋ねてきた。その記者の表情と言葉が、米メディアの日米野球への興味の薄さを象徴していたのだろう。

 19日まで日本各地で行われた日米野球は、単刀直入に言って、米国国内ではほとんど話題にはならなかった。MLBネットワークが全試合を生中継したものの、権利の問題もあるのか、ESPNなどのスポーツニュースでハイライト映像を見かけることもなかった。

 活字での報道もごく限られたもので、主要媒体ではAP、ESPN.comなどが簡単な結果ニュースを流していたくらい。当初は来日すると話していたある有名ウェブサイトの記者も、結局は取材は取りやめたという。理由を聞くと、「経費がかかり過ぎるから会社側が二の足を踏んだ」とのことだった。

 そんな状況であるがゆえに、元ヤンキースの看板打者だったカノの右足小指骨折も大きなニュースとしては伝わってこなかった。いや、大会が終わるまで、このようなイベントが海の向こうで開催されていたことを知らないスポーツファンも少なくなかったのではないか。

ハーパー、プホルスが参加していれば……

 これほど興味を持たれなかった理由は複数ある。まずは時差の関係で、特に米国東海岸では試合開始時間がAM4〜5時と考え得る限り最悪だったこと。当日のプライムタイム(米国東海岸では午後8〜11時)にテレビの再放映はあったが、録画ではバスケットボール、アメリカンフットボールなどの生中継の魅力に及ぶべくもない。

 また、一般的に米国の人々は国際試合に熱心ではなく、この時期のMLBの話題はやはりストーブリーグが中心。日米野球の期間中には、ジャンカルロ・スタントンがマーリンズと史上最高額(13年3億2500万ドル=約384億円)で契約したことの方がはるかに大きなニュースになった。

 そして何より、来日したメンバーが必ずしも“スーパースター軍団”とは呼べなかったことも大きかったに違いない。

「日本でプレーしているMLB“オールスターズ”の29人の中で、実際には21人はオールスターに選ばれた経験はない」

 CBSスポーツのジョン・ヘイマン記者がそうツイートした通り、今回のメンバーは目玉不足の感は否めなかった。活躍したのもホセ・アルテューベ(アストロズ)、ジャスティン・モーノー(ロッキーズ)、マット・シューメーカー(エンゼルス)、クリス・カプアーノ(ヤンキース)といったかなり地味な面々。ヤシエル・プイグ(ドジャース)、カノに加え、当初の予定通りブライス・ハーパー(ナショナルズ)、アルバート・プホルス(エンゼルス)のような大物が参加してくれていれば、話は少し違っていたかもしれない。

 あるいは、マイク・トラウト(エンゼルス)、クレイトン・カーショー(ドジャース)といった現役最高選手たち、もしくはアロルディス・チャプマン(レッズ)のような漫画じみた名物スターでもロースターに入っていれば……ないものねだりに過ぎないが、出場メンバー次第で、記者を派遣する在米メディアも増えていたことは間違いない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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