侍ジャパンに潜んでいた意外な“課題” 警戒されたスモール野球、走守で結束を

田尻耕太郎

勝因は投手陣「準備のたまもの」

日米野球シリーズを4勝2敗で終えた侍ジャパン。24年ぶりの勝ち越し、若手の活躍といった収穫だけでなく、そこには世界一奪回へ向けた課題も浮き彫りとなった 【Getty Images】

 侍ジャパン、世界一奪回への課題は意外なところに潜んでいた。

 11月20日、「2014 SUZUKI 日米野球」は沖縄で行われた親善試合で全日程を戦い終えた。「公式戦」は野球日本代表「侍ジャパン」がMLBオールスターに24年ぶりの勝ち越しを決めたものの、3連勝後の2連敗とやや後味が悪く、小久保裕紀監督は「親善試合とはいえ勝ちにいきます。最後まで真剣勝負」と決意を語っていた。

 試合は6対4で侍ジャパンが勝利。これでトータル4勝2敗。試合後の会見で小久保監督の声はトーンがいつもより高く、一方でMLBオールスターのファレル監督は「この試合は沖縄の皆さんに楽しんでいただくことが重要だった」と語りながらも、眉間に深いしわが寄っていたのを見ると、大リーガーたちもまた勝利のために全力を尽くしたことが伝わってきた。

 小久保監督が日米野球を総括する中で勝因として挙げたのは投手陣の頑張り。「彼らがシーズン中と同じような準備をして臨んでくれれば、ある程度(いい)勝負ができると思っていた。彼らの準備のたまものです」と敬意を込めてコメント。打者もコンディションを整えており、シーズンと変わらぬスイングを見せた。ファレル監督には「日本の打者はとてもパワフルだった」と映った。

主砲が不発も柳田、菊池が存在感を発揮

 その打線では全試合で4番に座った中田翔(北海道日本ハム)が打率1割6分7厘(24打数4安打)、1本塁打、3打点(親善試合を含む)とやや不発に終わった。ただ、小久保監督の信頼が揺るぐものではなく、また、日米野球前には「(チーム全体として)長打を打てるに越したことはないですが、そこにこだわらず、大きな希望を持たないということは思っています」と話しており、小久保ジャパンが目指すのはどこからでも点の取れる打線だった。

 この日米野球で特に機能したのは1番に座った(第4戦では2番)の柳田悠岐(福岡ソフトバンク)。8対4と快勝した第2戦では2長打を含む3安打4打点の大暴れ。第4戦でも3安打猛打賞の固め打ちで今大会MVPに輝いた。また、若手では山田哲人(東京ヤクルト)が持ち味のバッティングで良いアピールを見せた。「またこのユニホームを着たい。ただ、今回は一塁手での起用が多かったのは悔しい部分。本来のポジションである二塁手で出場できるよう、もっと成長したい」と鼻息荒く話した。

 その二塁手で存在感を輝かせたのが菊池涼介(広島)。親善試合でも高いバウンドの打球に果敢に突っ込み、ショートバウンドで捕球するとグラブをはめた左手でそのままバックトスをするスーパープレーを見せた。身長171センチと小兵ではあるが広い守備範囲に加えて、今季セ・リーグ2位の打率(3割2分5厘)を残したバッティングでも非凡なものを見せた。さながら「日本のアルテューベ(アストロズ)」だった。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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