明確にうかがえた本田圭佑の変化 リーダーとしての自覚を押し出した2連戦
試金石となったオーストラリア戦
セリエAではここ4試合ノーゴール。アジアカップ連覇に向け、本田の活躍は欠かせないだけに、現状打破が求められる 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
その一戦はこれまで通り、相手が高さとパワーを前面に押し出し、日本はボール支配率で上回る展開が予想された。しかし、ティム・ケーヒルがベンチスタートだったこともあり、オーストラリアは確実にボールをつないでビルドアップしてきた。4−3−3でスタートした日本はアンカーを務めた長谷部の脇のスペースを巧みに使われ、予想以上の劣勢を強いられる。前半15分までのポゼッション率では40%ほどと、相手に大きく引き離された。チーム全体が慣れている4−2−3−1へ布陣変更した35分以降の日本は落ち着きを取り戻したが、本田は苦しかった序盤から縦への意識を失わず、右サイドバックの酒井高徳や中央に飛び込んだ武藤嘉紀へラストパスを供給。自らも果敢にシュートを打ちに行った。時折、彼らしくないミスパスも見られたが、劣勢の状況下でもタフに戦えていた数少ない選手の1人だったのは確かだろう。
「(4−3−3の間は)オーストラリアが非常にうまくやっていたなという印象はありました。アグレッシブでしたし、スピーディーかつ簡単なミスが少なくて。最初は我慢だなと思っていたんですけど、こっちが自力で押し込めるようなところはなかったんで、そこが新たな課題かなと。今までオーストラリアとやって、ずっとそういう印象を受けていた。アジアカップでは韓国と並んで一番強力なライバルなんじゃないかなと思います」と彼はチームの未熟な部分を率直に認めていた。
こうした身の丈を第一に考えた物言いは、強引に「W杯優勝」を掲げて突っ走っていたブラジル大会までの本田にはあまりなかった。現状をしっかりと踏まえたうえで、一歩一歩、着実に進んでいこうという彼自身の変化が明確にうかがえた。
アジアカップ連覇に向けて
「経験のある選手が出ているということで、臨機応変にシステムをチェンジできたという収穫もあったんじゃないかと思うし、実際に変えてから良くなったという点で、今日に関してはポジティブに見たいなと思います。アジアカップはやっぱり経験が大事ですよね。前回は何とかその場しのぎで、根性みたいな形で優勝しましたけど、ああいうところでしっかり勝っていくこと。あの大会はいろいろなハプニングがあって、格下であっても一筋縄ではいかない。そういう意味でも、この2試合はしっかり勝つことを証明できたし、本当に一歩前に進めているんじゃないかな。これでまた後ろに下がらないように、続けてやっていきたいと思います」と、本田は発展途上の新生・日本代表を努めて前向きに見ようとしていた。そのあたりも、年長者として若手に自信をつけさせたいという気持ちの表れかもしれない。以前のようにガツガツしたところばかりを前面に押し出すのではなく、チーム全体を大きく見て、調整を図りつつ、改善を促していく。それが今の本田圭佑のリーダー像なのかもしれない。
11月2連戦は、2試合通算1得点3アシストと上々の結果で終わった。その彼が攻撃の絶対的牽引(けんいん)役としてアジアカップ2連覇、そして2度目の大会MVPを獲得するためにも、ここから12月末までのセリエAでコンスタントに結果を残し続けることが肝要だ。さしあたって4試合ノーゴールの現状を打破することが先決である。遠藤や長谷部らベテラン勢も、アギーレ監督も本田のさらなる飛躍に大きな期待を寄せているはず。今後も心身両面での進化を見続けたいものだ。