大谷“本気”の勝負で見せたすごみと課題 メジャーも驚く、大きな伸びしろ
心身両面で本気に近い勝負
2失点を喫したものの、コンディションが整ったメジャー打線相手にすごみを見せつけた大谷。敵将や対戦相手からもその才能に賞賛の言葉が聞かれた 【Getty Images】
「大谷は素晴らしいピッチャーだと思う。しかし、私たちも最初に対戦したときに比べて体も慣れてきたし、今日は必ず打ちたい」
大谷翔平(北海道日本ハム)が対戦を楽しみにしていると聞くと、キューバの大砲は「すごくいい勝負になると思うので、僕も楽しみにしている」と受けて立つ構えを見せた。
日米野球第5戦の焦点、もっと言えば、今シリーズ最大の見どころは大谷対メジャー打線だった。
京セラドームで行われた初戦では大谷が8回から登板し、ストレートで押しまくって1イニングを3者凡退。だが、このときは「顔合わせ」の意味合いが強かった。限定された登板回数を大谷はフルスロットルで飛ばした一方、3日前に来日したばかりのメジャー打線は時差ぼけがようやく抜けたか、どうかという状況だった。
今シリーズでは野球日本代表「侍ジャパン」が初戦から3連勝で勝ち越しを決め、ノーヒットノーランの快挙も達成。そうした屈辱を受けて第4戦の先発マウンドに登ったクリス・カプアーノ(ヤンキース)は、「最初の3試合を落とした後で、われわれにもプライドがある」と心境を明かしている。MLB選抜は来日してから数試合をこなしたことで、プイグの言うようにコンディションも上がってきた。
つまり第5戦の大谷対メジャー打線は、心身両面で本気に近い勝負が見られると期待されたのだ。
制球に苦しむも、貫いた攻撃的なピッチング
2回はダブルプレーもあって3人で仕留めたが、続く3回にリズムを乱す。先頭打者のルーカス・デューダ(メッツ)の3球目、真ん中に甘く入った154キロのストレートを左中間への二塁打とされ、続くアルシデス・エスコバル(ロイヤルズ)には高めのスライダーをうまく打たれて一、三塁。1番に戻ってアルテューベへの初球に投じた151キロのストレートは内角への逆球となり、捕手の嶋基宏(東北楽天)が捕れずにパスボールで先制点を献上した。
この日の大谷は力みのせいか、あるいはワールド・ベースボール・クラシック公式球や普段より硬く整備されたマウンドの影響か、ボールを制御できない場面が見られた。3回1死一、二塁からエバン・ロンゴリア(レイズ)に与えた死球は、ストレートがシュート回転したものだ。スライダーが抜け気味になり、思うようにコントロールできないシーンもあった。
4回には2つの内野ゴロでツーアウトを取った後、エスコバルに投じた149キロのストレートが真ん中に甘く入り、センター前ヒット。続くアルテューベには内角低めに投じた155キロのストレートをライト前に打たれた。今季ア・リーグの首位打者に輝いた右打者はさすが、厳しいボールを難なく弾き返した。
2点を失った3回に続き、迎えたピンチ。しかも2死から招いたものだ。対戦を「楽しみ」と話していたプイグを迎えたこの場面で、テレビ中継のカメラが大谷をアップでとらえる。すると大谷は斜め上方を見つめながら、膨らませた頬っぺたから息をフーッと吹き出した。まるで、「思うようにいかないなあ」と言わんばかりの仕草だった。
大谷のこの表情を見て、第2戦の前にジャスティン・モーノー(ロッキーズ)に聞いた話を思い出した。
「大谷はマウンドで怖がっているようなそぶりを見せないよね。(初戦では)攻撃的なピッチングをしていた。彼くらいの年齢では、強いボールを狙った場所に投げるのが重要だ。コントロールを備えていて、強いボールでどんなバッターも圧倒できる。彼は対戦したくなるようなピッチャーだ」
大谷のスタイルを考えたとき、「攻撃的なピッチング」というフレーズは何にも勝る賞賛だろう。果たしてそうした投球を、2013年にメジャー昇格してから鮮烈な活躍をしてきたプイグに見せることはできるだろうか。