オランダ代表はまだ生きている ラトビアに大勝、求められる若手の成長

中田徹

ハーフタイムに「もっとゴールを奪うぞ」

オランダはラトビアから6ゴールを奪い大勝。超攻撃的なサッカーで久々にファンをとりこにした 【写真:ロイター/アフロ】

 現地時間11月16日に行われたユーロ(欧州選手権)予選。グループAで1勝2敗のオランダは、ホームでラトビアに6−0と圧勝した。

 前半のうちにオランダはラトビア相手に3点を奪い、すでに勝負を決めていた。それでもハーフタイムの更衣室には、ベテラン選手たちの「このままじゃ不十分だ。もっとゴールを奪うぞ」という声が響いたという。

 実際には疲労もあって、後半はなかなか追加点を奪えなかったが、イブラヒム・アフェライが相手のチャージを食らってピッチに倒れ込んでいるのも気にせず、ウェズレイ・スナイデルが即座にFKで試合を再開させたことでも分かるように、オランダの大量得点への意欲は薄れなかった。69分、そのアフェライに代わってメンフィス・デパイが登場したことで、ピッチの上にフレッシュな風が吹き、オランダは78分(ジェフリー・ブルマ)、82分(アリエン・ロッベン)、89分(ヤン・フンテラール)と連続ゴール。最終スコアは6−0となった。

 試合終了後、スタジアムのコンコースでは「たくさんのゴールを見ることができて、今日はとても面白かった」とファンが顔を紅潮させ、記者室ではオランダ人記者が遠くにいる僕に向かって誇らしげに親指を立ててきた。フース・ヒディンクがオランダ代表監督に復帰してから、オランダは1勝4敗(親善試合を含む)という絶不調に陥り、ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会の3位という偉業もはるか昔話のようになりつつあったが、ラトビア戦で見せたオランダの超攻撃的なサッカーはファンを久しぶりにとりこにさせた。

光ったスナイデルの献身と頭脳

 メンバー表の上では4−3−3フォーメーションのオランダだったが、実際には右のファン・デル・ヴィール、左のイェトロ・ウィレムスの両サイドバック(SB)は相手ボール時にもポジションを高くとり、MFのようなポジションにいた。DFは事実上、センターバック(CB)のブルマとステファン・デ・フライの2人だけだった。

 そこで鍵となったのがスナイデルとダリー・ブリントが先発したセントラルMFのポジションだった。ブリントが20分、膝の負傷を負ったことによって、突如ヨルディ・クラーシーが入ったことによって、この守備的なポジションは小兵コンビになってしまったが、スナイデルとクラーシーは最後まで精力的な守備からパスをデリバリーし続けた。こうしてスナイデルを軸とするセントラルMFコンビはCBの前で相手チームのカウンターの門番となり、“2(CB)−2(セントラルMF)−3(両SB+ロビン・ファン・ペルシ)−3(アフェライ、フンテラール、ロッベン)”のような超攻撃的布陣の守備の破綻を防いだ。

 先発したブリントは左利きだが、それでもあえてヒディンク監督はセオリーに逆らって彼を右に置き、スナイデルを左側に配置した。その結果、オランダのビルドアップが左サイドに寄った時、スナイデルの得意とする低空の強烈なロングパスが右サイドへ放たれ、右ウイングとして張っていたロッベンへ一気にボールが渡り、オランダはビッグチャンスを幾度か作ったのである。この日のオランダの鮮やかな攻撃の裏には、エゴを捨て汚れ仕事に徹して攻撃参加を控えたスナイデルの献身と頭脳があった。

 戦前、ヒディンク監督が「ラトビア相手に負けるか引き分けだったら監督を辞める」と公言したことによって、過度の緊張が生まれたオランダをほぐしたのが、6分に生まれたファン・ペルシの先制ゴールだった。さらにロッベンとフンテラールが2ゴールずつを決め、前述のようにスナイデルがいぶし銀の味を発揮した。やはり、オランダのベテランたちの実力は抜きん出ている。

1/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント