菊池涼介はメジャーの内野で通用するか? 小兵・アルテューベから感じる可能性

中島大輔

身長168センチの首位打者

現役では最も身長が低い約168センチのアルテューベ(左) 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 日米野球第3戦の試合前、4、5人のメジャーリーガーがショートに集まって守備練習している姿を三塁ベンチ付近から見ていると、身長のとりわけ低い選手が目についた。ベネズエラ出身で、2011年にメジャー昇格を果たしたホセ・アルテューベ(アストロズ)だ。約168センチは現役メジャーリーガーの中で最も低い。

「メジャーに行く日本人は、もう体格の差を言い訳にできないですよね」

 そう言ったのはシーズン中、メジャーリーグの中継を行っているテレビ局の関係者だ。日本人の平均身長より小さいこの右打者は、24歳を迎えた14年シーズン、それほど大きなインパクトを残した。打率3割4分1厘で首位打者、225安打で最多安打、56盗塁で盗塁王と3つのタイトルを獲得したのだ。

小柄な内野手がメジャーで活躍できる理由

 身長168センチのアルテューベに話を聞けば、日本人内野手がもっとメジャーリーグで活躍するヒントが見えてくるかもしれない。そう思い、第3戦が始まる前に直撃した。

「その秘訣(ひけつ)が分かったら、みんながメジャーリーガーになっていると思うよ(笑)。他の内野手と比べて僕は背が小さいけど、ルーティーンを大事にしてきて、毎日一生懸命プレーして、100パーセントを試合にぶつける。本当にそれだけだ」

 一流選手は総じてルーティーンを持っているものだが、アルテューベは黙々と同じメニューを繰り返しながら、自分のバッティングスタイルを築き上げていった。注目すべきは単打を重ねるばかりではなく、14年は7本塁打、47本の二塁打を放つなどパンチ力も兼ね備えていることだ。思い切り振り抜くパワーはどうやって養っているのだろうか。

「それには3つあると思う。ウエートトレーニングをやることと、食べ物、それと自分に合ったバットを使うことだ。バットは33インチ(約84センチ)のバットを使うようにしているけど、ほかのバットでもフィーリングが合えば使っている」

 04年にメッツに移籍した松井稼頭央(現東北楽天)を皮切りに、数々の日本人内野手が海を渡ってきたものの、岩村明憲(前東京ヤクルト)、田中賢介(前レンジャーズ)、西岡剛(現阪神)、中島裕之(前アスレチックス)ら、ほとんどの選手がメジャーの壁に阻まれてきた。その中で数少ない成功を収めた内野手が、05年にホワイトソックスの正二塁手としてワールドシリーズを制した井口資仁(現千葉ロッテ)だ。
 かつて、井口がこんな話をしていたことがある。

「メジャーには当然、肩や脚力の強い選手がいっぱいいました。でもゲッツーの動きとか、総合的に見たら日本人のほうが動きとしてはいいのかなという感じがありましたね。岩村も、(西岡)剛も、もともと二塁手ではないのでセカンドの基礎をやっていない。相手も(ゲッツー崩しのための)スライディングを狙っているので、それによるケガが一番もったいない。彼らはうまくボディーバランスでかわしたり、当たっても衝撃を最大限逃すということをメジャーに行くまで実戦でやっていないから、いきなり向こうでやれと言われても、たぶん厳しいと思います」

 確かに岩村の本職はサードで、西岡や中島は主にショートを守っていた。そう考えると、期待したくなるのはセカンドの専門家だ。日米野球第3戦まで全試合でスタメン出場している菊池涼介(広島)は171センチと日本人の平均身長ほどの高さだが、体幹の強さ、優れたバランス感覚、脚力を兼ね備えている。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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