大リーガーに前田、金子はどう映った? 本来の出来でなくとも示した価値

中島大輔

侍のエースが示した価値

侍ジャパンのエース、前田(左)と金子。2戦までに先発した日本を代表する右腕をメジャーはどう見たのか 【Getty Images】

 日米野球が開幕する数日前、野球日本代表「侍ジャパン」の小久保裕紀監督はチーム最大の武器を「投手力」と断言していた。自慢のピッチングスタッフから指揮官が先発マウンドに送り込んだのは、初戦は前田健太(広島)、2戦目は金子千尋(オリックス)。ともに本来の出来ではなかったが、ふたりのエース格が自身の価値を示して侍ジャパンは2連勝を飾っている。

 前田はいつもよりスライダーを減らし、その代わりにツーシームを多投して5回までに2安打しか許さず無失点。一方、試合後に小久保監督が「今季の中でも状態が悪かった」と振り返った金子は、2点本塁打、三塁打と2本の長打が絡んで3点を奪われたものの、5回までに打たれたヒットは3本のみ。ストレートを軸に多彩な球種を投げ分け、強力打線に的を絞らせなかった。

 果たして屈強なメジャーリーガーたちの目に、ふたりはどう映ったのだろうか。まずは、初戦を任された前田について。2014年に打率3割1分9厘でナ・リーグの首位打者に輝いたジャスティン・モーノー(ロッキーズ)は、手元で鋭く落ちるツーシームがとりわけ印象に残った様子だ。

「素晴らしいボールを投げていたね。4種類の球でストライクを取ることができる。シンカー(ツーシーム)はとても走っていた。ストレートも球威があった。メジャーに加われば、どのチームであっても貢献してくれるはずだ」

ロンゴリア、前田は「求められるふたつの質を備えている」

 08年に新人王、09年にシルバースラッガー賞を獲得したエバン・ロンゴリア(レイズ)は、前田の投球術を賞賛する。

「ストレートのコントロールが良いね。メジャーリーグのピッチャーに求められるふたつの質を兼ね備えている。ストレートを自分の狙い通りにコントロールすることと、低めにボールを集めることだ。そうすれば、長打を多く打たれることはないからね」

 さらにダルビッシュ有が所属するレンジャーズでピッチングコーチを務めるマイク・マダックスが、投手目線で前田を分析する。
「自分の好きなタイプのピッチャーだ。素晴らしいストレートを投げるし、カーブも良くて、スプリットも良い。曲がりの小さなスライダーも良かった。コントロールの良さも見せていたね。そして緩急をうまくつけてくる。アウトの打ち取り方を知っているピッチャーだ。前田にはストライクをとれる4つのボールがある。メジャーリーグで活躍できると思うよ」

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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