“大谷”以上!打たれない金子千尋の直球 MLB打線相手に注目の投球の妙

ベースボール・タイムズ

日米野球・第2戦で先発するオリックス・金子。今季のデータを元にその投球を分析した 【写真は共同】

 東京ドームに場所を移し行われる、「2014 SUZUKI 日米野球」第2戦。10日の第1戦では、先発の前田健太(広島)が5回零封という投球でMLBオールスター打線を封じ、その後を牧田和久(埼玉西武)、大谷翔平(北海道日本ハム)、西野勇士(千葉ロッテ)とつなぎ、見事に完封勝利を収めた。日本人投手の能力の高さをあらためて示す一戦となったが、MLBもこのまま黙っていないはず。前日には京都観光で英気を養ったという“最強チーム”との対決から今後も目が離せない。

 こよいの先発投手は、金子千尋(オリックス)。前田と並び日本プロ野球が誇る右腕がマウンドに上がる。自身の移籍報道なども絡み、いやが上にも注目が集まる中、沢村賞右腕としての実力を発揮できるか。今回はデータの観点から見どころを探ってみたい。

データが示す金子のピッチングの特徴とは?

 さて早速だが、金子という投手にどんなイメージを持つだろうか。簡潔にまとめるのであれば、「多彩、かついずれもハイレベルな変化球を持ち、150キロ前後のストレートも有する本格派」といったところだろうか。フィールディングも良く、なによりマウンド上での落ち着いたたたずまいが“風格”とはまた違った“スマートさ”を感じさせる、日本では珍しいタイプの投手である。

 このようなイメージを、実際のデータから探ってみよう。今季、金子が投じた球種はストレート、シュート、カーブ、スライダー、カットボール、スプリット、チェンジアップ、シンカーの計8種。イメージだけでなく、実際に多彩な球種を操っている。そのうち、ストレートを投じる割合は3割程度。右打者に対してはシュート、左打者に対してはカットボール、スプリットといった球種の割合が若干多くなる傾向にある。どれだけ安打を打たれたかを示す被打率では、対右打者が2割8厘、対左打者が2割4分5厘と、対左に少し分が悪いが、どちらに対しても優秀な数字を残している。

 対右、対左ともに巧みな投球術で打者を翻弄(ほんろう)する金子だが、中でも最大の特徴は、実はストレートの質の高さにある。数多くの球種を巧みに操りながら、今季はストレートの被打率が2割を切っているのだ。一般的な投手でいけば、ストレートの被打率は2割台中盤から後半が多い。いわゆる“決め球”という変化球が1割台の被打率を誇ることが多いのだが、金子はストレート自体が決め球になるほどのクオリティーを持つのだ。これは、同僚の佐藤達也(オリックス)など、ストレートを武器にアウトを重ねていくリリーフピッチャーと変わらない水準の数値だ。ちなみに、最速162キロを誇る大谷の同データは2割5分ほどである。そのことからも、金子のストレートの質の高さがうかがえるだろう。

 さらに数字を探ると、単にストレートの質が高いだけでなく、「ストレートを生かす配球」をしていることが、より金子のストレートを打てないものにしている。金子は、0ストライク時、1ストライク時より、2ストライク時の方がストレートを多く投じていた(0ストライク時は30.4%、1ストライク時は29.1%、2ストライク時は39.1%)。変化球でカウントを稼ぎ、決め球としてストレートを使うという特徴があったのだ。

注目の金子vs.MLB打線

 10日の試合では、金子とならび評価される前田が5回無失点と、MLBオールスター相手に結果を残した。金子も期するものがあることだろう。

 日本では高いクオリティーを誇るストレートを生かす投球が、MLB打線相手に通用するかに、ぜひ注目してほしい。ちなみに前田は得意球のスライダーを武器に5回を2安打に封じたが、奪った三振はわずか2つしかなかった。その後をつないだ牧田らは1つも三振を奪うことがなく、1試合通じて奪三振は2つのみと、完封こそしたものの、バットには当てられていたという事実もある。毎年のように奪三振王ランキングに名を連ねる金子の投球が、MLBオールスターからいくつ三振を奪えるかというのも、注視したいところだ。

 くしくも、今夜のMLB側の先発マウンドには、かつて同じリーグで雌雄を分かち合った岩隈久志(マリナーズ)が上がる。日本で確かな実績を残し、満を持して移籍したMLBでも活躍。今季も15勝を挙げ、さらに評価を上げた右腕の姿は、どこか金子に通じるものがある。両雄による至極の投手戦。80球という球数制限はあるが、ぜひとも長く、楽しみたいものだ。

侍ジャパンの戦いをPC&スマホ&タブレットからチェック!

侍ジャパン インターネットライブでのデータ解析イメージ 【(C)SAMURAI JAPAN】

「2014 SUZUKI 日米野球」は全試合インターネット配信中! パソコン、スマホ、タブレットいずれの端末でも試合開始から最後までお楽しみいただけます。インターネットライブでは、地上波放送とは違い、NPB、MLBそれぞれに精通したデータアナリストが解説。データの観点で選手たちの特徴・対戦を掘り下げます。金子の投球をコース別に見比べた際の新たな傾向、岩隈の渡米後の投球の変化などもデータで解析される予定です。普通の観戦では物足りないあなたはぜひ!
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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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