村主章枝「未来に気持ちが向いている」 現役引退会見 一問一答

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「頑張り続けてここまできて良かった」

引退会見で贈られたプリンを頬張り、笑顔をみせる村主 【スポーツナビ】

――8日まで行われたグランプリシリーズの中国杯で、羽生選手が中国選手と激突するアクシデントがあった。村主選手も08年の全日本選手権で同様の経験があるが、どう思ったか?

 過去にルールができた当時から技術というものもすごく伸びていますし、スピード感というものも年々進歩してきていると思うんですね。その中で6分間の練習という分数をどのようにしていくか、人数をどのようにしていくか、また衝突などの事故があった時にどのような判断を下してどのように対応していくかというのを毎回、きちんとアップデートしていく必要があると思います。今後はそのようなところを今一度、国際スケート連盟などで考えていただければと思います。

――村主選手としては、羽生選手が下した出場という決断をどう思うか?

 あごを切っていたり流血していたので、なかなか普通の選手でしたら厳しい状態だった思うんですけれど、やはり彼のファンへの強い思いや困難を乗り越える意志の強さがそのような状況でも演技をしたい、演技をするんだというふうになったのかなと思います。そのあたりは本当に一回り以上若い羽生選手ですけれども、とっても尊敬しています。

――ケガなどいろんなことを乗り越えてきたが、つらい思い出は?

 つらい思い出のほうが多いかな(苦笑)。特にここ5年間くらいは体の変化もありましたし調整がうまくいかなかったりといろいろありましたけれど、成績が出ない時に得たものというのが今後、役に立っていく財産となりましたし、そこで学んだことがすごく大きかったので、成績は出ませんでしたが頑張り続けてここまできて良かったなと。

――アイスショーなどに出られる可能性は?

 オファーがあれば滑りたいなと思います。

――昨季の五輪シーズンを終えて競技から離れる話もあったのか? あったとしたらそこからもう1年頑張れた理由は?

 どちらかと言うと昨季のほうがさらに良くなかったので(苦笑)、身近にいるコーチも含め、「このまま終わるのはどうなのかな」という……演技自体もそういう感じだったので。今季は昨季より演技については良い部分もあったので、そういうこともありこの時期になりました。

ローリーの言葉をいつも思って滑り続けてきた

――振付師を目指すと伝えた時のニコル氏の反応は?

 ローリーは私が15の時からの長い付き合いで、そういう話を若い時からしていたので、今回それを伝えて「お疲れさまでした」ということと、「これから一緒に頑張っていこうね」ということでした。ローリーは「Please skate from your heart」ということをよく言うんですね。「心からのスケートをしてほしい」と。それは15の時から言われていることで、その彼女の言葉をいつも思って滑り続けてきましたので、そういう思いがあったからこそファンとのつながりというものが私にとっては意味がありました。

――ニコル氏と組んだ中で一番思い出深い演技は?

 トリノで滑ったショートプログラムの、フラメンコのトカ・オリージャ(『悲歌』)と(フリースケーティングの)ラフマニノフ(『ピアノ協奏曲第2番 第1楽章』)は印象に残っています。あとは、今年滑った『月光』は02年のソルトレークシティ五輪でも滑りましたし、私が大好きなペアの選手でエカテリーナ・ゴルデーワ、セルゲイ・グリンコフがリレハンメル五輪の時に同じく『月光』で滑りました。彼女たちのように滑れればいいなという思いで、ソルトレークに臨んで、今季も『月光』で臨んで、それが結局、最後の演技になったので、その点ではよかったなと思います。

 もう一つ、印象に残っているのが『Paint It Black』というローリング・ストーンの曲で滑った年があるんですけれど(編注:2003−04シーズン)、女性としては初めてパンツの衣装で競技に臨んだんです。ただ、ローリー自身もルールに引っかかるという懸念があったので、パンツにちょっとしたスカートをくっつけて臨んだわけですけれど、その次の年に女性もパンツスタイルがオーケーということになりました。成績ではありませんが、あの大会ではコスチュームの先駆者的なことができ、自分としてはとても意味があった作品だったかなと思っています。

――今季からボーカル入りの曲も使用可能になったが?

 私も昔、ボーカル入りの曲を使った時は本当に苦労して、作曲者の方から「これはボーカルではない」というサインもいただいて、毎回スケート連盟に提出するというエピソードもありますけれど、本当にいつも新しいことにチャレンジしてきたなぁという思いは、今振り返るとあります。

――長く現役を続けてこれた秘訣は?

 選手としてどこに行ってもリンクとジムの往復しかしてこなかった生活で。トリノ五輪からずっと大好きなプリン断ちをしてきたことが(取り組みとしては)変わっていたかなと思います(笑)。大好きなものを断ってでも五輪に出たいという思いがありましたので、それも斬新的かなと。
 あと、昔(鼻のそばに)ほくろがあったんですけれど、ほくろを取ると人生がよくなるかもしれないということで、そういうちょっと変わったこともしました。

――今やりたいことは?

 プリンを食べることですね(笑)。コリオグラファーになるのは本当に大変で、今日の朝もリンクで滑ってきたのですが、一番やりたいことはプリンを食べることですね。06年から食べていないので。本当にプリンの味を忘れちゃって! 逆に教えてほしいですね、「こういう味が今ブームなんです」というものを。

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