女王・久光製薬の3連覇は止められない? V・プレミアリーグ女子 14−15展望

田中夕子

全日本のエース、木村沙織が復帰した東レ

東レは3シーズン振りに全日本のエース木村沙織が復帰。どんなプレーを見せてくれるのか 【スポーツナビ】

 昨年は3位に終わった東レ。決勝進出を懸けたセミファイナルで久光製薬にストレート負けを喫した際、エースの迫田さおりは「久光はすごくいいチームで、対戦するのが本当に楽しみなチーム。だからこそ、その久光に勝って自分たちのほうがもっといいチームなんだと証明したかった」と涙した。

 攻撃が迫田に偏り、なかなかチームとしての形がつくれないままリーグを終えたことに加え、久光製薬と同様に多くの代表選手を擁するため、夏場の鍛錬期は少人数での練習、試合を余儀なくされたが、昨年はリベロも経験した小平花織など、中堅選手が中心となったチームでサマーリーグ、国体を戦い、若手選手に経験と自信が加わった。

 さらに今季は、3シーズンぶりに全日本のエース、木村沙織が復帰。攻守の要として絶対的な大黒柱が加わったことで、昨年は迫田頼みだった攻撃も分散されるだけでなく、トルコリーグや全日本での木村の経験が若手、中堅選手にとっての活力剤となるはずだ。特に勝負所で絶対的な強さを発揮してきた木村の存在が、チームにとってどう機能するのか。

 開幕戦で東レは久光製薬と激突する。どのチームにとっても、シーズンの幕開けとなる初戦から、目が離せない戦いとなりそうだ。

全日本とつなげて見る楽しみ方

 勝敗の行方だけでなく、チームとしての戦い方に目を向けても、V・プレミアリーグにはいくつもの楽しみ方がある。

 例えば、全日本ではミドルブロッカーの位置にウィングスパイカーが入る布陣を敷いたが、だからといって、日本の女子バレーにとってミドルブロッカーが不要なわけでは決してない。事実、全日本の眞鍋政義監督も「ミドルブロッカーの選手で、高い攻撃力を持つ選手がいれば、すぐにでも代表に入れたい」と話していたように、Vリーグから全日本、と視野をつなげて見れば、各チームにどんなミドルブロッカーがいて、その選手はブロックが得意なのか、スパイクが得意なのか、どんな時に得点に絡んでいるのかといった点に注目するだけでも楽しみは広がる。

 昨年はウイングスパイカーよりも高い得点能力を発揮した島村春世、大野果奈を擁するNECレッドロケッツは、まさに「点を取れるミドルがいるチーム」でもある。新加入のセッター、山口かなめとの新たなコンビも含め、注目チームとなりそうだ。

新天地で期待される注目の移籍、復帰選手は?

今季は移籍選手や復帰選手が多いのも特徴だ。佐野は昨年の中盤にデンソーに加入した 【スポーツナビ】

 さらに今季は移籍選手や復帰選手が多いのも特徴だ。

 昨年のリーグ中盤にデンソーエアリービーズに加入し、チャレンジマッチで勝利。1年でプレミアリーグ復帰を果たす原動力となったリベロの佐野優子。再度のひざのけがに見舞われ、一時は引退も決意しながら、地道なトレーニング、リハビリを重ねて本格復帰を果たした栗原恵が、岡山から日立リヴァーレへ移籍。そして今年1月に出産を経て、今季からプレミアリーグ昇格を果たした上尾メディックスで新たな戦いに挑む荒木絵里香。さらには、ドイツ・ブンデスリーガで単身、1シーズンを過ごし、今シーズンは代表候補にも選出された32歳のミドルブロッカー庄司夕起はトヨタ車体クインシーズへ。

 多くの経験を持った選手たちが、新天地でどんな活躍を見せ、どんな刺激を加えるのか。それもまた、注目すべきポイントと言えるだろう。

 ひいきのチームの勝敗や、新戦力として強烈な印象を残す選手の出現。たまには1人の選手だけに注目して試合を見るだけでも、きっとそれまでとは違う楽しみ方が広がる。チーム同士の対戦成績から見える相性や、各チームのベンチワークなど、バレーボールが楽しくなる見方はきっと数えきれないほどにある。

 来夏のワールドカップ、さらには2016年のリオデジャネイロ五輪へと続く、日本女子バレーの戦い、真価をその目で感じ取ってほしい。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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