女王・久光製薬の3連覇は止められない? V・プレミアリーグ女子 14−15展望

田中夕子

目標は世界クラブ選手権の表彰台

現在2連覇中の久光製薬。今季は史上2チーム目となる3連覇、そして世界クラブ選手権の表彰台を狙う 【スポーツナビ】

 15日に東京都・東京体育館で開幕するV・プレミアリーグ女子大会。移籍選手や復帰選手など、注目選手やチームが多くある中、やはり話題の中心に上がるのは昨年、そして一昨年の覇者であり今季は女子チームとして史上2チーム目となる3連覇を狙う久光製薬スプリングスだろう。

 開幕に先立ち、男女のV・プレミアリーグや、V・チャレンジリーグの選手、監督、関係者が一同に会した記者会見の席上、今季の目標を問われた久光製薬の中田久美監督は迷わずこう言った。

「世界クラブ選手権で表彰台に上がることです」

 日本から世界へ。中田監督が就任以後、常々口にしてきたことではあるが、昨年のV・プレミアリーグで連覇を達成した直後にアジアクラブ選手権、世界クラブ選手権に出場したことで、よりその目標は明確かつ、確固たるものになったと昨年のV・プレミアリーグでMVPを獲得した新鍋理沙は言う。

「世界クラブ(選手権)で表彰台に立つということを目標にする以上、日本では絶対に負けられない。連覇したチームとして恥ずかしい試合をしたくない、というプライドもあるし、今まで以上に、どのチームにも負けたくないという気持ちが強くなりました」

より確実に「ブレイク」するために

 世界選手権に出場した新鍋や長岡望悠、石井優希、アジア大会に出場した野本梨佳など、日本代表として国際大会に出場する選手も多く、他のチームがチームとしてのベースづくりに充てる夏場は人数も少ない状況での練習、試合を余儀なくされてきたが、人がいないからといって、やることが変わるわけではない。

 ラリーポイントのバレーボールでは、相手に勝利するためには、いかに「ブレイク」するかがカギになる。例えば、サーブでそのまま得点をする。サーブで崩して相手の攻撃をブロックする。さらにはブロックでワンタッチをしてレシーブでつないだチャンスボールを自チームの攻撃で得点する。

 その方法はさまざまではあるが、より確実に「ブレイク」するために、相手の攻撃をレシーブする際の返球位置や、そこからの素早い攻撃などに重点を置いてきたのが今季の久光製薬だ。新鍋や今季からキャプテンを務めるリベロの座安琴希など、高いディフェンス力を誇る選手も多く、これまでの2シーズンは大崩れした試合は数えるほど。久光製薬の三連覇を止めるのは、他チームにとって至難の業と言えそうだ。

雪辱を期す昨シーズン2位の岡山

昨シーズン2位に終わった岡山の宮下は雪辱を誓う 【スポーツナビ】

 とはいえ、他の7チームもそうやすやすと三連覇を達成させるわけにはいかない。崩れない久光製薬をどう攻め、どう崩すか。何しろ2シーズン連続で同じチームの胴上げを見続けてきたのだ。単に「日本一になる」というだけでなく、おそらくその前には「久光に勝って、日本一になる」という意味が込められているはずだ。

 中でも、その筆頭は昨年の決勝で対峙した岡山シーガルズと、一昨年の決勝で対峙した東レアローズ。セミファイナルでは3−0で勝利した久光製薬に決勝では1−3で敗れた後、岡山のセッター、宮下遥は胸に輝く銀メダルをすぐさま取り、無造作にギュッと、右手で握りしめてこう言った。

「2位がこんなに悔しいものだとは思いませんでした。自分の力が足りないことも、嫌というほど分かった。来年は、絶対に優勝できる力をつけた選手、チームになりたいです」

 全日本でも経験を重ね、ワールドグランプリ、世界選手権と多くの舞台を経験したことで、これまで以上に視野は広がり、セッターとしてだけでなく、選手として、人間としての幅も広がった。岡山は全日本とは異なるスタイルで戦うチームではあるが、コートの中で宮下がどんなプレーを見せるのか。勝敗のみならず、今季の大きな注目点であることは間違いない。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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