「侍」に帰ってきた内川聖一が抱く思い 忌まわしい記憶を乗り越え、次回WBCへ
第3回WBC以来の代表入り
第3回WBC準決勝の8回裏、1死一・三塁で一塁走者・内川(写真中央)はスタートし、タッチアウト。チャンスを潰した日本は大会3連覇を逃した 【写真は共同】
今回の代表メンバーは平均年齢が25.7歳と比較的若い。「この日米野球は2017年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に向けての強化試合という考え方から、若い年齢層で経験を積ませたい選手を選びました」と小久保監督。だが、その中で数少ない「バリバリのベテラン」(小久保監督談)として、糸井嘉男(オリックス・33歳)に次ぐ年長者として招集されたのが、先頃の日本シリーズでMVPにも輝いた内川聖一(福岡ソフトバンク・32歳)だ。
内川が代表ユニホームに袖を通すのは “あれ”以来。やはり触れないワケにはいかない。「ダブルスチール未遂」――13年3月のWBCでの忌まわしい記憶だ。
すべてを止めた“あの”走塁死
打席には4番打者の阿部慎之助(巨人)。走者は2人。一発が出れば逆転だ。しかし、その2球目に「事件」が起きた。
一塁走者だった内川が猛然とスタート。しかし、二塁走者の井端が三進していない。異変に気づいた時には、もうぼうぜんと立ち尽くすしかなかった。相手のタッチから逃げる余力も気力も残っていなかった。侍ジャパンはそのまま1対3で敗退。試合後は泣きじゃくる内川の姿がテレビ画面を通じて日本中に流された。
「僕は第2回大会にも出場しているから代表チームがどんな思いを持って戦い、そして優勝したのか、分かっているつもりです。それを自分のプレーですべて止めてしまった……」
これは帰国して数日後に聞いた言葉だが、まだ声を震わせて語っていたのをよく覚えている。