佐藤寿人がゴールを量産し続けられる理由 前人未到の11年連続二桁得点達成
記録達成には喜びより安堵
11年連続二桁得点を達成した佐藤寿人。彼はなぜゴールを量産し続けることができるのか 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
サンフレッチェ広島のFW佐藤寿人が11シーズン連続の二桁得点を決めたのは、J1リーグ第30節(10月26日)の清水エスパルス戦だった。J1で初優勝した2012年は第13節(5月26日)、J1連覇を成し遂げた13年は第15節(7月10日)での達成だっただけに、本人が「目安としている」と語る連続二桁得点記録の更新は、喜びよりも安堵(あんど)のほうが大きかったのだろう。
12年にJ1得点王に輝き、今年7月の第15節の大宮アルディージャ戦ではJ1通算得点ランキングで歴代3位に躍り出た。佐藤は名実ともに日本を代表するストライカーの一人である。11シーズン連続での二桁得点は、Jリーグ史上において前人未踏の快挙であり、チームを率いる森保一監督も次のように賞賛している。
「本当にすごいの一言に尽きる。僕は選手時代に、ベガルタ仙台で1年間、彼とプレーしましたが、本当に毎年、毎年ゴールを重ね、常に自分を高めることを忘れずにここまでやってきたことが、今年も二桁得点という結果につながった。元チームメートとして、今は監督と選手という立場として、本当におめでとうという言葉を伝えたい」
量産の秘訣は、チームメートへの要求
今シーズン、第16節(7月23日)の柏レイソル戦を最後に、佐藤は11試合もの間、ゴールから遠ざかっていた。その間、コンディションを崩してベンチ外になる時期もあったが、そこにはチーム一の理解者であるMF青山敏弘の不在も影響していた。
「得点できなかった時期はチームとしても苦しい時期だった。あのときはなかなか縦にボールが入らなくて。アオ(青山)が離脱していたのが、自分にとっても難しかった。自分にとっていいパスの出し手とは、縦にパスを出す勇気を持っているかどうか。リスクを冒したパスが出せるかどうかなんですよね。アオはここぞというときにそのパスを出してくれる。そこがFWにとってもいいところなんです」
14年ブラジルワールドカップから戻った青山が負傷離脱し、再び復帰したのが第23節(9月13日)のガンバ大阪戦。それから佐藤が第26節(9月27日)のヴィッセル神戸戦で先発に復帰すると、間もなくして彼のゴールラッシュは始まった。その背景には青山の存在が少なからず影響している。
ゴールを決めるための予測と準備
ゴールを決めるために、佐藤は予測と準備を怠らない 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】
「洋次郎ともずっとやっていきているのでイメージの共有はできている。彼は瞬間的な状況判断に優れた選手なので、自分の動きを見てくれている。今は前線のコンビネーションもよくなっているし、苦しかった時期とはチームの状態もだいぶ違う」
また、彼のストライカーとしての特徴を挙げる際によく用いられるのが、ゴール前での引き出しの多さだ。自分のゴールシーンすべてを言葉で説明できると話す佐藤は、常に自身がゴールを決めるために準備し、予測している。
「味方がシュートを打ったときも『決まれ』とは思わない。『抜けてこい』とか『こぼれてこい』って思うんですよね。そう思っていれば反応できる」
これはまさに“佐藤寿人”というストライカーを端的に表したセリフだろう。なぜなら彼の中に嗅覚という曖昧な言葉は存在しない。彼はボールの動きを予測して決めたゴールや相手との駆け引きを制して決めたゴールにストライカーとしての“美学”を見いだす。
そして、そのすべては計算し尽くされた動きにある。