鋼の王朝に挑む“運命”のロイヤルズ 1勝1敗で舞台は敵地サンフランシスコへ

杉浦大介

常勝軍団相手に連勝8でストップも見せた底力

第2戦でロイヤルズが勝利し1勝1敗のタイに。試合を終えてハイタッチするクローザー・ホランドと捕手のペレス 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

「ダイナスティ(王朝)対ディスティニー(運命)」。そんな非公式のキャッチコピーで呼ばれることも多い2014年のワールドシリーズは、最初の2試合で1勝1敗と星を分けた。内容的にも、ジャイアンツとロイヤルズはそれぞれの持ち味を発揮して1勝ずつを手にした感がある。

 第1戦ではジャイアンツの大黒柱マディソン・バムガーナーが7回1失点と好投し、ハンター・ペンス、バスター・ポージー、パブロ・サンドバルの中軸打線が合計5安打、4打点と活躍して先勝。逆に第2戦では、ロイヤルズが6回に得意の集中打で大量5点を挙げ、強力ブルペンが守り切ってタイに戻した。

「今日みたいに1勝目がないと2勝目もない。ワールドシリーズに入って1勝できたというのはすごく大きなはずだし、次は敵地になりますけど、これでチーム全体が落ち着いたプレーができると思います」

 青木宣親のそんなコメント通り、今ポストシーズンでの8連勝がついに止まった後、第2戦を制したことはロイヤルズにとって大きな意味があった。

 29年ぶりのプレーオフで接戦を制し続けてきたロイヤルズは、確かに運命的なまでの強さを感じさせてきた。ただ、2010年のディビジョンシリーズからプレーオフは9ステージすべて勝利し、この5年間で3度目の世界一を目指すジャイアンツは勢いで突破できる相手ではない。本格的な“王朝”の足固めを目論む常勝軍団を相手に、地元カンザスで連敗していれば、早くも終戦ムードが漂っていたことだろう。

 しかし、実に1985年第7戦以来のワールドシリーズ勝利を手にすることで、連勝の勢いが止まってもすぐに巻き返す底力をロイヤルズは誇示した。サンフランシスコへの移動の飛行機が、より陽気でリラックスしたフライトになったことは想像に難くない。

総合力ではジャイアンツ有利か

 もっとも、ペーパー上とここまでの戦いぶりを照らし合わせる限り、総合力ではやはりジャイアンツがやや上にも思える。

 投手力と守備的が基調になっているという意味で似た雰囲気もある両チーム。しかし、バムガーナーという絶対的なエースを持つだけでなく、打線の力量、監督の資質、大舞台の経験といった要素でジャイアンツが上回る。成熟したジャイアンツの選手たちは誰もが目的を持ってプレーしているように見え、同時に一丸となって勝利に向かう意思統一も感じられる。

 一方のロイヤルズは、最初の2戦では盗塁ゼロと自慢の機動力がまだ不発。プレーオフのチーム首位打者だったエリック・ホズマー、打点王のアレックス・ゴードンはともに無安打で、しかもDH制度のないサンフランシスコでは、第2戦で同点、逆転打を放ったビリー・バトラーを先発起用できないのも痛い。

 また、これまで堅実につなぎ役を果たしてきた青木も、最初の2試合で合計7打数0安打と当たりが止まっている。

「いつもよりなんとかしたいという気持ちはありますけど、その気持ちが自分のプレーを左右しているかというとそうではない」

 青木本人はそう語ってはいたが、守備面でも細かなミスが目立ち、やや気負いが感じられるのは事実である。このように快進撃の主役を担ってきた一部の主力が停滞し始めた中で、ロイヤルズはそれでも敵地サンフランシスコで勝てるのかどうか。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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