秋山監督がよみがえらせた大砲・吉村裕基 自信戻り恩返しへ=鷹詞〜たかことば〜
熱血指導でよみがえった大砲
不振に陥っていた吉村(背番号6)をマンツーマン指導でよみがえらせた秋山監督。今季、大事な場面で勝負強さを発揮するバッターとなった 【写真は共同】
だが、秋山監督は吉村の長打力を買い、自らの手で再生に尽力した。移籍入団会見の翌日には秋季キャンプに合流させ、異例ともいえる付きっきりのマンツーマン指導。グラウンドでのフリー打撃が終わると、そのまま室内練習場で打ち込んだ。気づけば3時間半の濃密な時間を過ごした。それが8日間も続いた。
「右肘の使い方や内角球へのヘッドの出し方、右足の軸回転などたくさん教えていただきました。自分が良いと思ったことが悪かったり、逆に悪いと思っていたことが意外と紙一重だったり、たくさんの発見がありました」
翌春のキャンプでは、同年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)代表だった内川聖一、松田宣浩、本多雄一と同組で練習。その期待がうれしかった。失っていた自信がだんだん戻っていく実感があった。
「ミスターオクトーバー」の活躍で最高の恩返し
「福岡出身の僕にとって、秋山監督はスーパースターです。監督はいつも適切なアドバイスをしてくれます。もう現役をやめられて10年以上経つのに、まだ自分がまるで打席に立っているかのような感覚で言葉を掛けていただける。本当にスゴイと思います。最初の頃は監督の言われている(アドバイスの)レベルに自分が達していなかったけど、少しずつ理解して実践できるようになってきました」
プロ12年目で初めて味わう10月の真剣勝負。この大事な戦いの中でのMVP獲得は吉村の野球人生を大きく変えていくかもしれない。次は初めての日本シリーズだ。だが、「自分のできることをやるだけですよ」と拍子抜けするほど冷静な答えが返ってきた。
「ハタチそこそこなら大はしゃぎするかも。もう、僕も30歳ですから(笑)」
それでも決戦の20日の試合前には「勝てば甲子園。高校球児の気持ちで頑張りますよ」と、なかなか気の利いたコメントを残してくれた。
「もう1回、秋山監督を胴上げだ」
鷹ナインの心は一つ。25日から阪神と激突する日本シリーズを勝って、日本一の夢を成就するだけ。キーマンはやはり「10月の男」吉村か。秋山ホークスが再び勢いを取り戻した。