箱根駅伝予選会、それぞれの涙の先に 本戦を見据えた各大学の戦力を分析

出口庸介

予選会で流れたいくつもの涙

今年も昭和記念公園で熱い戦いが繰り広げられた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 箱根駅伝予選会が、立川市の昭和記念公園に移って14年目になる。広大な「みんなの広場」では、毎年のように涙が流される。復活や初出場を達成した歓喜、連続出場を果たした安心感、思うように走れなかった無念、本戦に出場できない悔しさ。それらが涙となって表れる。
 今回の注目点は、
「戦力が充実した山梨学院大が、どんな総合タイムで走るか」
「通過の危機がささやかれる中央大の86回連続出場はなるか」
 だった。

実力を発揮できず予選会で涙を流す大学も 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 中央大は新庄翔大(4年)を軸に7位通過で安堵(あんど)の涙を流し、箱根駅伝の常連校の東京農業大、法政大は実力を発揮できず11位と12位で落選。人目をはばかることなく、号泣したのは東京農業大の浅岡満憲主将(4年)だった。

 この2校の不振から浮上したのが、創価大だった。同大の予選会最高は第69、74回大会予選の12位。この頃はシード校が9校。予選からは6校が本戦に出場。“遠い箱根路”だった。6年前から強化を図ったが、前回は19位と低迷。しかし、今季は有力高校生の加入や戦力の充実で大きく躍進。初の10位内に入り、最後の枠に滑り込み、箱根路に進出する42校目の大学となり、歓声と喜びの涙に同大のベンチは沸いた。

 予選会終了後、同公園で主催者の読売新聞から、号外が発行されるが、その大見出しは「中大、連続出場を守る」と「創価大、初出場」を告げたもので、好タイムでトップ通過の神奈川大ではなかった。東海大、山梨学院大などを含め「通過して当然」のチームは、淡々と終了後のOBや関係者への報告する会が続いていた。

城西大、村山が快走

予選会をトップで走り抜けた城西大の村山紘太 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 この日の東京は早朝から厚い雲が空を覆い、吹く風は晩秋の気配を感じさせるものだった。午前8時頃から、太陽が出始め空は青さを増していった。それでもスタート時の気象状況は気温14.7度、湿度51パーセント、北の風1.6メートルの好条件で、好記録の期待も湧いていた。

 レースを先導すると見られたエノック・オムワンバ(山梨学院大・3年)が予想通り先頭に立つが、アジア大会代表の村山紘太(城西大・4年)もゆずらない。7キロ過ぎからはオムワンバを振り切り、首位を独走したのは“日の丸”をつけた選手の貫録だった。村山は2年連続日本選手トップ。58分26秒は、これまでの日本選手最高タイムだった木原真佐人(中央学院大、現カネボウ)の記録を14秒も上回った。一方のオムワンバは、前回は57分57秒で、村山に1分20秒も勝っていたが、今回は58分34秒を要した。

 トップのスピード争いとは別に、この予選会は各校上位10人の総合タイムで争われる。山梨学院大を頂点に、神奈川大、東海大が三強を形作り、残り5校ほどはよほどのアクシデントがない限り、通過濃厚と見られていた。村山やオムワンバらのように、エース格がタイムを稼いでもチームの8番手以降が不振では、話しにならない。5キロごとに「チームの10人が通過した順位」と、「10人の合計タイム」が紹介されるが、この2つは比例しない。それがこの予選会の妙味でもある。トップで10人がゴールした上武大が、総合タイムで6位だったのが、それを象徴している。

 三強の一角に安定感を誇る国学院大が割り込む健闘を見せ、5位中央学院大、6位上武大、8位順天堂大などは順当な通過だった。7位に踏ん張った中央大は、伝統の力ともいえるだろう。村山がトップでゴールしたが、城西大は総合タイムで9位。最後に創価大が箱根路の“通行手形”をものにした。

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