U−19敗退、瀬戸際で弱い若き日本選手 今こそ抜本的な改革の舵を切るとき

川端暁彦

「南野が決めないと勝てない」

エース南野がPKを外して終戦。日本は4大会連続でU−20W杯の出場権を逃した 【Getty Images】

 頼れるエースの右足から放たれたボールは、異質なまでの勝利への執着心を見せてきた相手チームの守護神によって防がれた。その瞬間、U−19日本代表の4大会連続でのアジア予選敗退は決まった。世界切符には、届かなかった。

「悔しい気持ち、しかないですね。そのチャンスも、その力も僕たちにはあったと思う」

 その一身に(あるいは、一心に)期待と重圧を受け止めてきた南野拓実は、絞り出すようにそう話し始めた。敗因を問う声、力不足を嘆く声、あるいは日本サッカーの未来それ自体に対する疑問に対して応えつつ、必ず「でも、僕がPKを決めていたら勝てたと思います」と繰り返した。

 今大会の現場で何度も聞かれた「南野が決めれば勝てる」というフレーズは、裏を返せば「南野が決めないと勝てない」ということでもあった。鈴木政一監督も「南野頼みになってしまう」と懸念していたほどの依存度の高さを思えば、南野がPKを外して負けるというエンディングは、確かに無惨ではあったが、象徴的だったのかもしれない。

オフ明けの練習で感じられた「ゆるさ」

 AFC・U−19選手権準々決勝。U−20ワールドカップ(W杯)のアジア最終予選を兼ねるこの大会に与えられている世界切符は全部で4枚。ベスト4に入れば自動的に与えられるその切符を、日本は3大会連続して準々決勝という「あと一勝」の段階で逃していた。今度こそはとリベンジを誓っての挑戦だったが、結果だけを見れば同じだった。日本は北朝鮮に1−1からのPK戦(4−5)で敗れ、世界切符奪還という目標に届かなかった。

「内容的には良くても最終的には勝ち切れない。これが今大会だった」

 鈴木監督の言葉は、まさにそのとおりと言うしかないだろう。1−2と敗れた中国との初戦にしても、土壇場までもつれたベトナムとの第2戦にしても、この北朝鮮戦にしても、チャンスの数やボール支配率という意味で見れば、日本は相手を上回っていた。その点で言えば、内容的にも見るものが乏しく、試合を支配できずに敗れ去った前回大会の敗戦と単純に同一視するべきではないだろう。

 その一方で、届かなかった現実は同じだ。そこも直視すべきだろう。会心の内容で勝利を収めた韓国との第3戦から中3日、若き日本の選手たちに韓国戦で見せた心理的な強さは残っていなかった。韓国との激闘を終えた翌日、日本は今大会で初めてのオフを取った。心身の疲れを癒やすことが目的だったが、なまじ大きな達成感を得ていた直後だっただけに、これがゆるみを生んだ一面はあるのだろう。オフ明けの練習では、「ちょっと、今日の練習はゆるかったですよね。引き締めないと」(MF金子翔太)といった言葉が出るほどだった。

試合の結末を左右した勝利への執着心

 北朝鮮という相手もこうした心の隙を助長したのかもしれない。映像を観るだけでは、決して強いチームには見えなかっただろう。技術的に抜きん出た選手は見当たらず、中東勢のような身体能力の“バケモノ”がいるわけでもない。戦術的にも洗練されているとは言い難く、「基本的に、引いて守ってカウンター」(鈴木監督)というスタイルである。日本では一般に低く見られる、そんなスタイルだ。

 だが、一筋縄ではいかない相手だった。うまくはないが、忠実でタフで、何より「勝ちたい」チーム。徹底的に体を張って戦って、勝負どころではすべてを投げ出してきた。37分に彼らが奪った先制点は、直接的にはDF内山裕貴のクリアミスが原因である。だが、そこまで貝になって守るばかりだった彼らが、「ここで決めるしかない」とばかりに闘志をむき出しにし、こぼれ球へことごとく日本より早く反応し続けて繰り出した波状攻撃は敵ながら見事というほかなかった。日本は確かにボールを支配していたが、あれほどチーム一丸で集中力を傾け、ゴールへ迫った時間帯があっただろうか。

 北朝鮮のGKが露骨な演技で時間稼ぎをする様は失笑すら買っていたし、見ていて気持ちの良いものでは決してなかった。ただ、日本の力を認めた上で「もうPKに持ち込むしかない」と割り切って戦い抜く、抜きん出た勝利への執着心がこの試合の結末を左右したことも、また確かだろう。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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