ビジョンが見えないオランダ代表に危機 早くも予選2敗目でユーロ出場に暗雲漂う

中田徹

オランダに全く油断はなかった

早くも予選2敗目を喫したオランダ。W杯で3位に輝いた面影はなく、“ナイーブ”なチームになってしまった 【Getty Images】

 現地時間の13日に行われたユーロ(欧州選手権)2016予選で、オランダはアイスランドに敵地で0−2と敗れた。過去の対戦成績は8勝2分けと大きく勝ち越していたが、オランダは決してアイスランドを見下してなかった。アイスランドのレベルアップは欧州でも知れ渡っており、ワールドカップ・ブラジル大会の予選ではクロアチアの前に涙をのんだものの、プレーオフまで進出(2戦合計0−2)。そしてユーロ2016予選でもトルコとラトビアを共に3−0で破っていたのだ。

 一方、オランダと言えばフース・ヒディンクの初采配となったイタリアとの親善試合で0−2と敗れ、続くユーロ予選初戦ではチェコ戦を1−2で落とす最悪のスタートとなった。10月になってもオランダの調子は上がらず、ホームのカザフスタン戦で大いに苦しみ、辛うじて3−1で逆転勝ちした。

 こうして迎えたアウェーでのアイスランド戦だけに、オランダに油断は全くなかった。アイスランドの速攻を恐れ、オランダの立ち上がりは非常に慎重。GKヤスパー・シレセンも使いながらDF間で横パスを繰り返し、レイキャビクのファンからブーイングを浴びたほどだった。

 ボールを保持することで相手に隙を与えないサッカーをしようとしたオランダだったが、それでもビルドアップのミスからボールをアイスランドにプレゼントし、肝を冷やす場面が立ち上がり2度あった。

 そして9分、センターバックのデ・フライが不必要なファウルで相手を倒し、PKをアイスランドにあっさり献上。プロになってからPKを止めたことがないことで知られるシレセンが、今回もアイスランドのシュートを止められず、0−1とビハインドを負った(ゴールは10分)。

失点のほとんどは個人のミス

 この試合で69パーセントものボールポゼッション率を記録したオランダだが、アイスランドのコンパクトな陣形を崩すだけのインスピレーションに欠け、ボールを持たされるだけの状態が続く。それでも26分にはアリエン・ロッベンの鮮やかなスルーパスがロビン・ファン・ペルシに届き、GKと1対1になったもののシュートはブロックされ、29分には左サイドバックのダレイ・ブリントのクロスをロッベンがヘッドで合わせたが、惜しくも外れた。終わってみれば、この2本のシュートだけが、オランダの絶好機だった。

 42分にはアイスランドがコーナーキックの混戦から追加点を決め、試合を2−0で折り返した。ヒディンク監督になってから、オランダは常に前半をビハインドで終えている。

 対イタリア   前半0−2 試合終了0−2
 対チェコ    前半0−1 試合終了1−2
 対カザフスタン 前半0−1 試合終了3−1
 対アイスランド 前半0−2 試合終了0−2
 
 しかも、失点のほとんどが、DF陣の個人的なミスによる。この4試合で喫した7失点のうち、後半許したのは1つだけだが、それも1−1で迎えたアディショナルタイム、ダリル・ヤンマートのバックパスがミスとなり、チェコに決勝点を贈ったもの。“ナイーブ(無知、おめでたいという意)”という言葉が本当に似合うチームにオランダはなってしまったのだ。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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