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フィギュアのルール改正のポイントは?
求められる、より正確で美しい演技

 いよいよ2018年平昌五輪(韓国)へ向けての、新たな4年間がスタートした。国際スケート連盟(ISU)にとって五輪後のオフは、大きなルール改正を実施するタイミングでもある。14−15シーズンからのルール改正は何か、そして今後4年のフィギュアスケートの方向性はどうなるのか。ポイントを読み解く。

30秒ルールとボーカル解禁

今季はSP、FSともに「オペラ座の怪人」を滑る村上(写真)をはじめ、ボーカル入りの曲を選ぶ選手が一気に増えた
今季はSP、FSともに「オペラ座の怪人」を滑る村上(写真)をはじめ、ボーカル入りの曲を選ぶ選手が一気に増えた【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 まず試合全体に関わる主な変更としては、「30秒ルール」と「ボーカル解禁」がある。


 開始時間については、これまで、選手は「自分の名前を呼ばれてから60秒以内にスタートポジションに立たないと棄権とみなす」というルールがあったが、さらに「30秒以内に立たないとマイナス1点」となった。ただしグループの第一滑走者は60秒まで許される。


 30秒は選手感覚としてはかなり短いもので、9月に行われたロンバルディア杯では、無良崇人(HIROTA)が演技開始遅れでマイナス1点されている。運用に慣れるまでは、選手によっては慌てることもあるだろう。



「ボーカル解禁」はすでに話題になっているが、これまではアイスダンスのみ認められていたボーカル曲を、シングルとペアでも解禁する。以前は、歌詞の内容が表現力に影響する不公平を無くすために、ボーカルは禁止されていた。今回は、選曲の幅を広げ、より多様な演技を期待するための改正だという。


 解禁の影響を受けて、今季は『オペラ座の怪人』を始めとしたミュージカル、映画、またオペラなどを使用する選手が一気に増えた。よりドラマティックな演技が期待されるだろう。

ジャンプはより多様な種類を正確に

ソチ五輪では連続ジャンプの規定違反もあり4位に終わったフェルナンデス。今季からはその規定がなくなる
ソチ五輪では連続ジャンプの規定違反もあり4位に終わったフェルナンデス。今季からはその規定がなくなる【写真:ロイター/アフロ】

 ジャンプは、より多様なジャンプを正確に行うことが求められるようになった。大きな変更は下記になる。


(1)ルッツとフリップのエッジエラーについて


 ルッツはアウトサイド、フリップはインサイドで踏み切れなければならないが、「明確な違反(eマーク)」と「不明確(!マーク)」の2段階に評価され、「明確な違反」は二重に減点されることになった。


「明確な違反」は、基礎点が70%になった上、GOEが「−2〜−3、かつ最終的に必ずマイナス」となる。例えば3回転ルッツが明確に違反だと、基礎点の6.0点が2.1点になることも。一方、「不明確」の場合は、基礎点そのままで、GOEが「−1〜−2」となる。(※GOE=出来映えによる加減点)


 フィギュアスケートの採点で、選手のミスを「ダブル減点」するのは初めてのケース。それだけ国際スケート連盟は、ルッツとフリップのエッジに対して厳格化を図ろうとしているのだ。減点のリスクが大きくなったため、ルッツやフリップのエッジが不明確な選手が、ジャンプを回避する傾向も現れている。


(2)同じジャンプの繰り返しは70%の基礎点に


 フリーで、同じジャンプの繰り返しは「+REP(repeat)」マークがつき、基礎点が70%になる。


 昨季までは、同じジャンプの繰り返しは「+SEQ」マークがつき、基礎点が80%になり、「連続ジャンプ」を1つ跳んだと見なされていた。すると「連続ジャンプは3回まで」という規定のカウントが複雑になり、選手としては演技中に混乱することもあった。


 ソチ五輪ではハビエル・フェルナンデス(スペイン)が、予定していた4回転サルコウが3回転になったために3回転サルコウを2度跳んだと見なされ「+SEQ」となった。結果、連続ジャンプが4回とカウントされ、規定違反で0点となってしまった。今季からは、演技後半にジャンプをリカバリーしようとする努力を評価するため、連続ジャンプとしてカウントすることはなくなった。


(3)2回転ジャンプはそれぞれ2度まで


 フリーでは、2回転ジャンプはジャンプ1種類につきそれぞれ2回までとなった。


 この改正で困ったのは、連続ジャンプの後ろに「ループ」をつけるのが苦手な選手。連続ジャンプの2つ目・3つ目はすべて「トウループ」にする作戦が使えなくなったのだ。グレイシー・ゴールド(米国)は卓越したジャンパーだが、後ろに「ループ」をつけるのが苦手なため、今季は、連続ジャンプそのものを1つ捨てる、という状況になっている。

野口美恵
元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。