トップ選手の引退休養、ボーカル曲解禁
ソチ五輪翌シーズンの勢力図を占う

日本ジュニア勢が大活躍

日本ジュニア勢の活躍が目立つ今季。樋口新葉もジュニアGPファイナルへの進出を確定させた
日本ジュニア勢の活躍が目立つ今季。樋口新葉もジュニアGPファイナルへの進出を確定させた【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 また、日本にとって朗報なのがジュニア勢の活躍だ。ジュニアグランプリシリーズ7戦のうち6戦が終了しているが、そのすべてで日本人が表彰台に乗った。ファイナル進出は、各2戦の順位で決まるが、すでに女子の樋口新葉(日本橋女学館中)と永井優香 (駒場学園高)、男子の山本草太(邦和スポーツランド)がファイナル進出を確定させている。また中塩美悠(広島ク)が1位と4位、宇野昌磨(中京大中京高)は初戦が2位で、ファイナルの可能性を残している。


 女子は誰もが「3回転+3回転」を跳び、男子も宇野が4回転トウループを習得するなど、シニア顔負けの技術レベルまで上がっている。来季以降の日本スケート界は、一気に世代交代が進みそうだ。フィギュア強化部長の小林芳子氏は「ジュニアのトップがシニアに上がり、今度はジュニアの子たちが『次は私が表彰台に』といういい意欲が生まれ、連鎖している」と話し、強化の成功を喜んでいる。

ボーカル曲解禁、過半数のスケーターが使用か

ジャパンオープンでラジオノワはボーカルなしの曲を選択
ジャパンオープンでラジオノワはボーカルなしの曲を選択【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 さて今季のフィギュアスケートを観戦するうえで、一番の変化といえば、ボーカル曲の解禁だろう。100年以上のフィギュアスケートの歴史の中でも、シングル競技でボーカル曲を使うのは初。そのため振付師もコーチも、選曲や編曲が悩ましいところだ。


 グランプリシリーズに先立って行われたジャパンオープン(10月4日、さいたまスーパーアリーナ)では、現役の男子3人と女子6人のうち、ボーカル入りだったのは計7人。ボーカル曲の人気の高さがうかがえる。


 ボーカル曲の利点を語るのは、『ミス・サイゴン』を演じた宮原。「ボーカル入りになったことで、感情を込めやすいし、物語を表現しやすくなった。強さのなかに美しさのある女性を演じたい」という。小塚もイタリアのボーカル曲『イオ・チ・サロ』を使用し、「悲しみのなかで相手との楽しかったことを思い出すという曲。難しい感情だが表現したい」という。


 村上と無良は共に『オペラ座の怪人』を使用。やはりボーカル解禁となったことで、ボーカルが入ってこその名曲を、満を持して使う選手が多いようだ。ショートもフリーも『オペラ座の怪人』を選んだ村上は、「ショートはクリスティーヌ役、フリーは怪人役で、2つで1つのプログラム、という気持ち。ボーカルが入ってもアイスショーは違う緊張感があるが、役の違いを演じ分けたい」と意気込む。


 一方、フリーでボーカル入りを使わなかったのは、ロシア女子2人。ラフマニノフのメドレーを使ったラジオノワと、バレエ曲『火の鳥』を使ったポゴリラヤは、正統派の美しさを際立たせることに成功していた。

 五輪王者の羽生は、ショートはボーカル曲を選ばず、ショパンの『バラード第1番ト短調』。「これまでと違う雰囲気でピアノ曲をやりたいと考えた」と言い、冒頭で12秒間制止したまま始まるプログラムで、静寂や伸びやかさといった昨年までとは違うイメージに取り組む。

 フリーはボーカル入りの『オペラ座の怪人』で、コーチのブライアン・オーサーは「オペラ座は多くの選手が使ってきた曲だが、ボーカルが入ることでよりドラマティックになった。すべてがボーカルではうるさいし、どれくらいボーカル部分を使うかは、シーズンを通して調整していきたい」と話す。


 また町田は、ショートが『ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲』とボーカル曲ではなく、フリーは合唱入りのベートーヴェンの『交響曲第9番』。


“ボーカルで盛り上げれば良い”とは限らないのが男女シングルの難しいところ。最初から最後までボーカルという選手はほとんどおらず、アクセント的な使い方にとどめている。いずれにしてもボーカル解禁によって、選曲や編曲の幅が出たことは間違いない。各選手の曲選びのセンスも、観戦の楽しみになりそうだ。

野口美恵

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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