トップ選手の引退休養、ボーカル曲解禁 ソチ五輪翌シーズンの勢力図を占う
日本ジュニア勢が大活躍
日本ジュニア勢の活躍が目立つ今季。樋口新葉もジュニアGPファイナルへの進出を確定させた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
女子は誰もが「3回転+3回転」を跳び、男子も宇野が4回転トウループを習得するなど、シニア顔負けの技術レベルまで上がっている。来季以降の日本スケート界は、一気に世代交代が進みそうだ。フィギュア強化部長の小林芳子氏は「ジュニアのトップがシニアに上がり、今度はジュニアの子たちが『次は私が表彰台に』といういい意欲が生まれ、連鎖している」と話し、強化の成功を喜んでいる。
ボーカル曲解禁、過半数のスケーターが使用か
ジャパンオープンでラジオノワはボーカルなしの曲を選択 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
グランプリシリーズに先立って行われたジャパンオープン(10月4日、さいたまスーパーアリーナ)では、現役の男子3人と女子6人のうち、ボーカル入りだったのは計7人。ボーカル曲の人気の高さがうかがえる。
ボーカル曲の利点を語るのは、『ミス・サイゴン』を演じた宮原。「ボーカル入りになったことで、感情を込めやすいし、物語を表現しやすくなった。強さのなかに美しさのある女性を演じたい」という。小塚もイタリアのボーカル曲『イオ・チ・サロ』を使用し、「悲しみのなかで相手との楽しかったことを思い出すという曲。難しい感情だが表現したい」という。
村上と無良は共に『オペラ座の怪人』を使用。やはりボーカル解禁となったことで、ボーカルが入ってこその名曲を、満を持して使う選手が多いようだ。ショートもフリーも『オペラ座の怪人』を選んだ村上は、「ショートはクリスティーヌ役、フリーは怪人役で、2つで1つのプログラム、という気持ち。ボーカルが入ってもアイスショーは違う緊張感があるが、役の違いを演じ分けたい」と意気込む。
一方、フリーでボーカル入りを使わなかったのは、ロシア女子2人。ラフマニノフのメドレーを使ったラジオノワと、バレエ曲『火の鳥』を使ったポゴリラヤは、正統派の美しさを際立たせることに成功していた。
フリーはボーカル入りの『オペラ座の怪人』で、コーチのブライアン・オーサーは「オペラ座は多くの選手が使ってきた曲だが、ボーカルが入ることでよりドラマティックになった。すべてがボーカルではうるさいし、どれくらいボーカル部分を使うかは、シーズンを通して調整していきたい」と話す。
また町田は、ショートが『ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲』とボーカル曲ではなく、フリーは合唱入りのベートーヴェンの『交響曲第9番』。
“ボーカルで盛り上げれば良い”とは限らないのが男女シングルの難しいところ。最初から最後までボーカルという選手はほとんどおらず、アクセント的な使い方にとどめている。いずれにしてもボーカル解禁によって、選曲や編曲の幅が出たことは間違いない。各選手の曲選びのセンスも、観戦の楽しみになりそうだ。