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実り多き男子バレーのアジア大会準優勝
発展途上のチームに必要なさらなる進化

結果以上に、これからにつながる大事な大会

アジア大会はイランに敗れて準優勝。しかし、結果以上に収穫の多い大会となった
アジア大会はイランに敗れて準優勝。しかし、結果以上に収穫の多い大会となった【坂本清】

 決戦直前のプレスルームは、活気で溢れていた。アジア大会も残り1日、団体球技で日本が決勝に進出し、勝てば金メダルを獲得する。多くの報道陣が訪れるのは、しごく当たり前のことでもある。だがそれは、男子バレーの会場で、少なくともこの4年に限れば、ほぼ見られなかった光景。


 狭いミックスゾーンに押し寄せた記者に囲まれ、今大会がシニア代表でのデビュー戦となった大学1年生の石川祐希(中央大)は言った。


「アジア大会の決勝をすごく楽しみにしていました。やっぱり、金メダルがとりたかった。だからこの結果は悔しいです」


 低迷が続いた全日本男子バレーに、わずかではあるが確かに見えた光。そして、今こそ本気で変わらなければアジアでベスト4に入ることも決してたやすいことではないという危機感。銀メダルという結果以上に、これからにつながる大事な糧となる要素を、いくつも与えられた大会となった。

強化が遅れていた日本

 4年前の中国・広州で開催されたアジア大会では16年振りに優勝したが、その後はアジア選手権でも表彰台に上がることができずにいた。その背景には、アジア勢、特にイランやインドなど、数年前まではバレーボールにおいては決して先進国ではなかった国々が本格的な強化に着手し、著しい成長を遂げたこともある。キャプテンの越川優(JT)はこう言う。


「昔の感覚だと、アジアで強い国は日本、韓国、中国というのがトップ3だと思われていますが、今は違う。イラン、インド、カタール。アジアのレベルがどんどん高くなっているのは確かです。特にイランは数年前からジュニア世代のチームにもヨーロッパから監督を招へいして、選手たちは早い段階から『世界のバレーとはこういうものだ』と世界で戦うために必要な戦術や技術を教えられ、理解してプレーしています。残念ながら日本はまだその環境にない。もともとレベルの高い“個”がトップレベルの戦術に基づいてプレーしている。強くなるのは当然と言えば当然ですよね」


 日本が決勝で対峙したイランは、4年前の決勝戦でも顔を合わせた相手なのだが、2011年にシニア代表の監督にアルゼンチンの名将、フリオ・ベラスコが就任してから劇的な進化を遂げ、今や世界ランキングは10位(14年9月22日付)。アジア大会の直前にポーランドで開催された世界選手権では6位に入った。もはやアジアの雄ではなく、世界のトップチームの1つと言っても過言ではない。


 対する日本はと言えば、ロンドン五輪の出場権を逃し、新監督の就任も遅れに遅れ、昨年2月に初めての外国人監督としてゲーリー・サトウ氏が就任したが、わずか1年で解任。迷走が続いた。動き始めたのは、南部正司監督が就任した今年の2月から。20代前半の選手や大学生を積極的に合宿へ招集し、ようやくリオ五輪へ向けた強化のスタートが切られた。

おとなしい若手をベテランが鼓舞

大学生ながら、今季から日本代表に初招集された柳田(左)、石川(中央)、山内(右)の3人
大学生ながら、今季から日本代表に初招集された柳田(左)、石川(中央)、山内(右)の3人【坂本清】

 チームとしての戦い方を理解し、それぞれが技術アップに努める。日本代表での経験も豊富な越川や清水邦広(パナソニック)、米山裕太(東レ)やリベロの永野健(パナソニック)といった面々がそれぞれのペースで、なおかつチームがどうあるべきかを考えながら行動するのに対し、初めて代表に招集された選手たちは、何をどうすればいいのか戸惑うばかりで、練習時も日常生活でも余分な遠慮が続いた。


 もっと自分を出せ、もっとアピールしろ。そうは言っても、おとなしい選手が多く、響いているのか分からない。全日本として戦う意味、覚悟、責任。ベテラン組が見れば、それすらも希薄に感じることも少なくなかったと永野は言う。


「自分で限界を決めちゃうんですよ。『俺はこれぐらいしかできないから』って。そうじゃないだろう、と。お前らが持っている力はそんなもんじゃない。だったらもっとやってみろよって。ものすごい能力を持った選手がそろっているからこそ、その部分だけは、しつこくしつこく言い続けてきました」


 8月からフランス、チェコ、ブラジルへ1カ月半にも及ぶ長期合宿を敢行。アジア大会に向けた実戦経験の場として、強豪国との親善試合も多く組まれた。当然ながらコートに立てば、年齢も経験も関係ない。互いがポジションを争うライバルであり、ベテランも新人も自分のできることを前面に出してアピールしなければならない場でもある。


 若手選手に対して、経験がないならばそれすらもプラスに変えて、とにかく思い切りやればいい。そう諭してもなかなか形に表れない。自身も大学生で代表に選出され、08年の北京五輪にも出場した清水はこう言う。


「僕が代表に入った頃は試合に出られるのがうれしかったし、1点取れればそれだけでうれしかったんです。とにかく思いっきりプレーをしていたし、正直、何も考えずに楽しくやっていただけでした。だから今の若手も、たとえばピンチサーバーでコートに入るなら、とにかく思いっきり打てばいいんですよ。たとえそのボールが壁にぶつかるぐらいのアウトになったとしても、周りからすれば『アイツ、思い切りやっているな』と思うし、チームの力になる。そのためにはもちろん僕らがそういう環境を作ってあげることも大切だし、若いヤツらももっと前に出てきていいと思うんです」

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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