マルチプレーヤーを目指す大竹里歩 アジア大会の悔しさを糧に歩み続ける

田中夕子

「もっとできた」ことに悔いが残る

若手主体で臨み、4位に終わったアジア大会。大竹にとって後悔が残る大会となった 【坂本清】

 深夜に放送される試合には、木村沙織や新鍋理沙、今夏のワールドグランプリに出場した選手たちがいる。見ている人の多くが、きっと戸惑ったに違いない。「あれ、アジア大会のバレー放送って夜中にやっているの?」と。

 世界選手権とアジア大会が同時期に開催されているため、イタリアでの世界選手権はシニア代表で戦い、仁川でのアジア大会は25歳以下の若手主体で臨む。メンバーの異なる日本代表がそれぞれの大会を戦う中、韓国、タイなどトップチームが顔をそろえたアジア大会では、日本代表の最終成績は4位。

 タイとの3位決定戦を終えた直後のミックスゾーンで、大竹里歩は少しうつむきながら言った。

「世界選手権に出ているチームと同じぐらいの意気込み、決意を持って臨んだつもりだったのに、自分自身も、チームとしても全然出し切れなかった。それがすごくもったいない。試合が終わってから『もっとできた』と思ってしまうことが、すごく悔しいです」メダルを逸したからではなく、最後に負けたからでもない。悔しさの理由は別にあった。

「ハイブリッド6」の影響でシニアから外れる

アジア大会のチームを率いた安保澄監督。シニアと同様、ポジションレスのバレーで戦った 【坂本清】

 ワールドグランプリで眞鍋政義監督が「ハイブリッド6」と掲げたシニア代表の新戦術では、これまでのウィングスパイカー、ミドルブロッカーといったポジションの概念を取り払い、攻撃力のある選手をコートに入れる、という策が取られた。これまでミドルブロッカーが入っていた位置に、長岡望悠や石田瑞穂といったチームではウィングスパイカーの選手を配置。ミドルブロッカーの大竹は、シニア代表から外れた。

「私だけじゃなくて、日本のミドルブロッカーはみんな悔しかったと思うんです。でもそれは、攻撃力とか、足りないところがあるから招いたこと。もっともっと、攻撃力もそれ以外の細かいプレーも、何でもできる選手にならなきゃダメだと痛感しました」

 アジア大会は、ただ優勝を目指すだけでなく、来年以降、再びシニア代表でプレーするための挑戦の場、と位置づけて臨んだ大会だった。安保澄監督が率いるアジア大会の日本代表も、眞鍋監督が率いるシニア代表と同じく、安保監督が「どのポジションからも同じテンポで打てるマルチな選手を集めた」と言うように、全員が複数のポジションをこなすポジションレスのバレーを基軸とする。実際にタイとの開幕戦も大竹、島村春世、伊藤望といった、所属チームではミドルブロッカーの選手3人がスタメンに入る布陣で臨んだ。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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