マンセル助言「可夢偉よ、ホンダつかめ」 往年の世界王者、現代F1に大胆提案

田口浩次

鈴鹿の表彰台はメルセデスとレッドブルの争い

マンセル氏の日本GP予想は、本命メルセデス、対抗レッドブル。レッドブルにもチャンスはあると見る 【Getty Images】

――今週末の日本GPだけにフォーカスした場合、誰が勝利すると思いますか? また、表彰台を狙えるチャンスは誰にありそうですか?

 そうだな、まず意外とチャンスがありそうなのはレッドブルだ。彼らは毎年、この鈴鹿にマッチしたマシンを準備しているからね。もちろん、ポールポジションはメルセデスの争いだろう。あとは、メルセデスがドライバー2人にどう戦わせるのかが問われるレースになるだろうね。特にニコはポールポジションを絶対狙ってくるはずだ。ここで前に行かれると厳しいからね。ニコもルイスも、乗れているから、ポールポジション争いは本当に激しいものになると期待しているよ。

 フェラーリは表彰台こそ可能性を残しているが、エンジンパワーが少なすぎる。なかなかつらいレースになるだろう。ウィリアムズも表彰台を十分に狙えるポジションにいる。ただ、マシンはメルセデスやレッドブルと比較すると、鈴鹿サーキットに完璧にマッチしているとは思わない。競争力は十分だが、あとはどう戦うかという感じだね。

 なんだかんだ言っても、表彰台の席は3つしかない。私個人の意見を言うと、順当にいけばメルセデスとレッドブルが分け合うんじゃないかな。なぜ、レッドブルなのかって? エイドリアン・ニューウェイが設計したマシンのハンドリング性能だ。彼らのマシンは第1セクターと呼ばれる1コーナーからS字コーナー、デグナーカーブを抜けるあたりまでは一番時計じゃないかと予想している。そこから第2セクター、第3セクターの最終シケインまではメルセデスと競り合う感じだろう。だが、最終コーナーからメーンストレートで、エンジンパワーに勝るメルセデスが一気に引き離すだろうからね。

F1人気復活のため“36”に増加を

マンセル氏のお気に入りマシンは86年に乗った「ウィリアムズ・ホンダFW11」。そのマシンで日本GP決勝当日、デモ走行を行う予定 【Redblue/Koji Miura】

――今年は観客数減少が世界中で言われています。何か対策はあると思いますか?

 個人的な見解を述べさせてもらえば、減少の理由は単純だ。ちょうど70年代後半から90年代の盛り上がりはいったい何だったのかを考えれば分かるはずさ。あの当時を表現するマジックナンバーを教えよう。“36”だ。意味が分かるかい? 最大36台、予選進出へのカットラインは26台だった。その36だよ。近年の出場台数は20〜22台。自分がレースを戦っていたときは、モナコで一度に39台が争っていた年もあった。当然エキサイティングなレースになる。予想外の展開も発生した。もし盛り上げるならば、再び多くのマシンをコース上に送り出すことが一番の対策だと思うよ。いつの時代も出場車両全車が一定以上の競争力を持っているわけじゃない。現在だと22台中、まともなレースをしているのは14〜16台程度だろう。

 あとはドライバーに求められる要素が変わったことも大きい。昔のマシンはHパターンシフトのマニュアル操作で、パワーステアリングがなく、アクセル&ブレーキ&クラッチの3ペダルだった。操作にも力強い筋力が必要で、まさに男のマシンだった。現在のマシンはパワーステアリングで、パドルシフトで、コーナーごとにボタン操作で駆動力を最適化させている。言わせてもらえれば、片手ハンドルで口笛を吹きながらレースしているようなものだ。まあ、それは言い過ぎだと思うが、昔のマシンはドライバーが少しずつマシンのフィーリングからセットアップを進めて、エンジニアはそのフィーリングとフィードバックをマシン開発に生かした。しかし、現代はエンジニアがコンピュータを駆使してマシンセッティングを決めて、ドライバーはそれを運転する役割になった。つまり、仕事の役割と主導権が逆転している。それも1つの要因かもしれないね。

――最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

 日本GPは間違いなく世界でも最高峰のレースイベントだ。鈴鹿は世界最高のドライバーズサーキットの1つでもある。ぜひとも、テレビ観戦や実際の現地観戦で、本物のレースを楽しんでもらいたいね。

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