マンセル助言「可夢偉よ、ホンダつかめ」 往年の世界王者、現代F1に大胆提案
20年ぶりに鈴鹿に帰ってきたマンセル氏。トレードマークのちょびヒゲは健在だ。かつての盟友ホンダの復帰を喜んだ 【Redblue/Koji Miura】
そのマンセル氏に独占インタビューを敢行。ケータハムで苦戦を強いられる小林可夢偉への助言をはじめ、ワールドチャンピオンを争うルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグ、さらに日本GP決勝の予想など、大いに語ってくれた。最後には、F1観客数減少の対策として、大胆な持論を展開した。(取材日:10月3日)
ホンダ復帰は誰もがハッピー
まさにアメージングな気持ちだ。私が以前日本を訪れたのは、もう20年も前のことだからね。あの熱狂的な日本のF1ファンに再び会えるかと思うと、とても気持ちが高ぶるよ。今回、私はレースを観戦し、多くのテレビ関係の仕事をこなし、日曜日には「ウィリアムズ・ホンダFW11」でのデモ走行など日本GPのプロモーション活動にも協力する。
何よりもうれしいのは、来年F1に復活するホンダのローンチイベントとも言える日本GPに呼んでもらえたことだ。ホンダの復活はきっと日本に限らず、世界中のF1ファンにとってもエキサイティングなニュースだと思う。もちろん、日本のファンは待ちわびていたよね。ホンダは長いこと活動を休止していたから。今回のホンダ復帰は誰もがハッピーだし、エンジン契約をしたマクラーレンはとてもハッピーだろうね。でも、エンジンだけじゃダメだ。マクラーレンはもっと良いマシン開発をしなくちゃいけないね。きっとマシン開発においても今後、ホンダの助けが加わるんじゃないかな。
――今年のF1はターボエンジンが復活しましたが、80年代にドライブしていたターボエンジンとはずいぶん違いますね。どのような印象を持っていますか?
乱暴に言えばパワーのないターボエンジンだね(笑)。もちろん、マシン全体のパッケージは素晴らしい。現在のレーシングカーは本当に芸術的だ。エアロダイナミクスが洗練され、多くのダウンフォースを生む。そのために、タイヤサイズが小さくなり、規制を強くしなければいけなくなった。でも、何よりも驚きだったのは、昨年から今年にかけて変更された搭載燃料量だよ。一気に燃費とエネルギー効率が向上してレースが成り立ったのだからね。すごい革新だ。しかも新生ターボの1年目。これからの2〜3年は、ものすごい進化を見せると思う。
メルセデスは世界王者を決断しなければ
年間王者争いはチームメートのハミルトン(手前)とロズベルグが激しく争う。マンセル氏はメルセデスの決断を求める 【写真:ロイター/アフロ】
いい質問をするね(笑)。まず、現状の2人について言えば、どちらのドライバーも本当に集中してレースを戦っている。その点は素晴らしいチャンピオンシップ争いだと思う。ただ、残念なのはニコのマシンがシンガポールGPで止まったことだ。あと、イタリアGPでシケインをミスしたが、あれは少し不思議に思った。その前のベルギーGPも驚きだった。ああした決断(2台の接触に関して、レース後にチームが主導して話し合いの場を持ち決着させた)をメルセデスが下したことにもね。
ルイスはずっと最高の仕事をしていると思う。メルセデスはそろそろどちらのドライバーがワールドチャンピオンにふさわしいのか、ということを考えているだろう。そして、そろそろ決断しなければいけないタイミングに来ているとも思う。私自身の評価では、過去3レースに関して言えば、ルイスの圧勝だね。彼は今ノリノリだ。一方のニコはマシンの信頼性という部分で苦しめられている。チームは早急に対応すべきだ。そうでなければ、このままルイスが先を走ってしまうからね。ニコも素晴らしいドライバーだけに、お互いに100パーセントの状態でシーズンを最後まで走らせてあげたいね。
可夢偉なら私の言葉の真意を理解できる
去就が注目される可夢偉。マンセル氏はホンダのシート獲得を勧めるが、果たして…… 【写真:ロイター/アフロ】
うれしい評価だね。私もドライバーとしての可夢偉は好きさ。彼にはより良いマシンとチームに移籍するための挑戦を頑張ってもらいたい。彼自身の能力は、間違いなくトップチームで走るだけの力がある。私がひそかに期待している可夢偉の次のステップは、ずばり『ホンダ』だよ。ホンダが彼に注目し、彼もホンダの人々を振り返らせるために努力してもらいたいと願う。となれば、チームはマクラーレンとなるわけだけど、彼らを納得させるには、その能力があることを証明しなくちゃいけない。ぜひ、それを目指してもらいたいね。
――ご自身もロータスのF1シートを獲得するときや、ウィリアムズでのチャンスをつかむまでに自宅を売却するなどの苦労がありました。今、可夢偉は苦境に立たされていると思います。何か彼にアドバイスできることは?
今やるべきことは、ホンダに対して、本当に、本当に、本当に、真摯な態度で接することだよ(笑)。いや、私の言いたいことは、こうした苦境というものは、多くのドライバーが経験していることなんだ。ドライバーがチームを選ぶのではなく、チームがドライバーを選択するのだからね。若いうちに選ばれしドライバーは成功も早くつかむ。ネルソン・ピケ、アイルトン・セナ、アラン・プロスト、みんな選ばれしドライバーだった。私はそうではなかったがね(笑)。
つまり、ドライバーに選択肢はないんだ。でも、成功するには良いマシンを手にしていなければならない。良いマシンがあれば、ほぼ自動的に成功もついてくるからね。可夢偉はこの私の言葉の真意を理解できているはずだ。もう、十分F1を経験しているからね。いかに次の年に向けて良いチームと接触し、そのシートを獲得することが重要のなのかということをね。私は可夢偉ならそれができると信じている。それは日本のF1ファンにとっても素晴らしい未来でもある。初めてワールドチャンピオンを争える日本人ドライバーが生まれるのかもしれないのだからね。