錦織「自分のテニス」で準決勝進出 楽天ジャパンOP

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渾身のバックハンド・リターン

序盤、錦織はストロークの荒い相手に自分のリズムを作れず 【Getty Images Sport】

 錦織圭(日清食品)が一歩一歩、最終日に近づいている。

 楽天ジャパンオープン男子シングルス準々決勝が行なわれた3日は快晴で絶好のテニス日和。立ち上がりから上空を舞った秋風は、スタンドを埋めた観客には心地よかったが、錦織にはやや気になる強さだ。第1セットの第2ゲーム、ファーストサーブが入らないところをつかれた。15−30からフォアのリターン・ウイナーを浴び、続く打ち合いからは巧みなロブをベースライン上に落とされていきなりブレークを許した。ジェレミー・シャーディ(フランス)はビッグ・サーブ、ビッグ・ショットが売り物。スロースターターで目覚めが遅いということもあって、錦織はリズムをつかむのにやや手こずった。第3ゲーム、40−15から追い上げ、デュースに持ち込むこと3度。それでも、3本目のブレークポイントを渾身(こんしん)のバックハンド・リターンで奪って流れを引き寄せた。

「風も強く、この大会(の男子シングルス)では初めて屋根が開いたのでやり難かった。ストロークの荒い選手なのでリズムを作れませんでしたが、ブレークバックできたのは大きかったですね。0−3になると大変ですから」

 対戦成績は1勝2敗。ジュニア時代にも負けている相手だが、シャーディは前日の記者会見で、錦織が最も成長したのはサーブだと指摘した。そのサーブが要所、要所で決まり始め、テンポも速くなってリズムが出てきた。4−4で迎えた第9ゲーム、シャーディのファーストサーブにプレッシャーがかかった。錦織は40−15から持ち込んだデュースで、リターン・ウイナーを2本続けてブレークに成功。そのまま第1セットを奪った。

苦しいながらも自分のテニス

終わってみれば変幻自在にコースを変える「自分のテニス」でストレート勝ち 【写真:Atsushi Tomura/アフロスポーツ】

 前日、右臀部(でんぶ)の痛みを訴えてダブルスを棄権した。第2セットの終盤にメディカル・タイムアウトをとって、コート上で腰のマッサージを受けた。

「そうですね、第2セットから痛みが増したので、タイムアウトは予定通りでした。プレーできない痛みではないし、プレー自体はよくなってきている。今日は、コンディションと自分との戦いでした」

 言葉を返すようだが、故障とは思えない第2セットのいい流れだ。いきなり第1ゲームをサービスブレークして好スタート。錦織のテニスの楽しさは自在なボールさばきで、ダウンザラインに逆クロスに、変幻自在にコースを変えて客の目を楽しませる。リターンゲームでは、ボールを早くとらえてラリーの主導権を奪ってしまうのだが、そのコースが意表を突いてスタンドは思わず息をのんだ。第5ゲーム、次々とリターンエースを決めて2度目のブレークを奪いストレートで勝負を決めた。苦しいながらも、どうにか自分のテニスを切り開いてしまうのは、やはり自信だろう――腰の痛みも切り抜けるのではないか。

 第3シードのミロシュ・ラオニッチ(カナダ)は第1セット、タイブレークまでもつれたが、デニス・イストミン(ウズベキスタン)の痛恨のダブルフォルトに救われ、順当に勝ち上がった。準決勝で、ラオニッチはジル・シモン(フランス)と、錦織はベテランのベンヤミン・ベッカー(ドイツ)と対戦する。


(文:武田薫)
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