ワインとランニングを同時に楽しめる大会 伝統あるロードレースに参加!<前編>

南井正弘

【南井正弘】

第30回メドックマラソンに参加!

 メドックマラソンと聞いて、「あのワインを飲みながら走るフルマラソンですね!」とすぐに反応するのは、走ることと同時にワインに対する造詣の深いランナーである。パリマラソンあたりと比較すると、知名度は若干劣るものの、現在では地元フランスをはじめとしたヨーロッパはもちろん、米国やカナダ、日本からも数多くのランナーがエントリーする人気大会となっているという。

 そんなメドックマラソンも今年で記念すべき第30回を迎え、走ることと同じくらいお酒も大好きなフリーライターの南井正弘が実際に走って、このレースの醍醐味(だいごみ)をレポートする。

 メドックマラソンというロードレースがあることはもちろん知っていた。給水所にミネラルウォーターだけでなくワインも用意されていて、ボルドー郊外はメドック地区の有名シャトー(自社畑を持ち、ブドウ栽培からワインの醸造までを行う栽培家兼醸造家)の各銘柄をテイスティングできるという内容に、「随分と無茶なレースを考えた人がいたものだなぁ」と思っていて、まさか自分が参加することになるとは思わなかった。

 それがエントリーすることとなったのは、今年の4月に行われたアシックス主催のメディア向けランニングイベントで、シドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子さんと走る機会があり、並走しながらこのメドックマラソンの素晴らしさを聞いたことからだ。2013年に初めて参加した彼女から発せられる情熱に満ちた数々の言葉は、自分をこのレースへ参加させるのに充分であった。

お祭りのような明るい雰囲気に、高橋尚子さんも魅了される

メドックマラソンの制限時間は6時間30分。時間内にゴールすると、ビンテージワインをはじめとした完走賞がもらえる。一見簡単に思えるが、30度近い気温、アップダウンの続く厳しいコース、ワインを飲みながら走ることを考えると、冬の一般的なフルマラソンで5時間台の持ちタイムがないと完走は難しいかもしれない 【南井正弘】

 参加決定からレースまでは書籍やウェブサイトからメドックマラソンに関する数少ない情報を収集した。それによると、2007年まではオフィシャルのスポーツ用品スポンサーはアディダスが務めたが、翌08年からはフランスでも高いシェアを誇るアシックスが担当しているという。また、20箇所以上の給水所でワインが供されること、レース終盤では生ガキ、牛ステーキが食べられ、制限時間の6時間30分以内にゴールすると木箱に入ったビンテージワインがもらえるということなどが分かった。

この大会の、すべてのランナーが主役になってランとワインを同時に楽しむことができる雰囲気に魅了されたといい、昨年に続き今年もエントリーした高橋尚子さん。ボルドーワインで最も好きなシャトーはポイヤック村のシャトー ピション ロングヴィル バロン。覚えにくいシャトー名を記憶するために、この名前をチームメンバーで連呼しながら走ったこともあったという 【南井正弘】

 そして一番気になったのが、フルマラソン以外のハーフマラソンや10kmといった短い距離のレースが設定されていないだけでなく、コースはアップダウンが多く、ビギナーランナーにとっては決して容易なレースではないことである。しかも13年は気温が摂氏30度を超えていたというから、フルマラソンは10回目となる自分にとっても、今年のレースも気温次第では相当に過酷なレースになることを覚悟しなければならなかった。

 レース2日前に滞在先のボルドーに到着すると、気温は昼間で摂氏28度程度と過ごしやすいが、日本とは異なり湿度が低く、とても乾燥していることがすぐに理解できた。レース前日はボルドー中心部のガロンヌ河畔などを6kmほど走ったが、汗をかいても目視できる前に乾いてしまうのである。

 ポイヤック村で開催されているマラソンエクスポ(ゼッケンの受け渡しやグッズ販売が行われるイベント)に向かう前に、今年も出走する高橋尚子さんのインタビューを行う。去年実際に走っているだけに、饒舌にご自身の体験を語ってくれたが、この大会独自のすべてのランナーが主役になってランとワインを同時に楽しむことができるお祭りのような明るい雰囲気に魅了されたといい、昨年の3時間53分というタイムが人生で最も遅いフルマラソンのタイムであったという。「今年はすべての箇所でワインのテイスティングを楽しむつもりなので、去年よりも遅いタイムでゴールすることとなるでしょう」と高橋さんは語ってくれた。

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著者プロフィール

フリージャーナリスト。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。スポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズを得意分野とし、『フイナム』『日経トレンディネット』『グッズプレス』『モノマガジン』をはじめとしたウェブ媒体、雑誌で執筆活動を行う。ほぼ毎日のランニングを欠かさず、ランニングギアに特化したムック『Runners Pulse』の編集長も務める

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