日本バスケのこれからとNBLの役割 トップリーグの“あるべき姿”を見据えて

山谷拓志

スポーツナビ編集部より

2013−14シーズンNBLファイナルの様子。今シーズン、NBLはどのような感動を与えてくれるのだろうか 【写真提供/NBL】

 国内バスケの各リーグやNBAが次々と開幕する、バスケファンにとっては待ちわびた10月がやってきた。そんな2014年10月に、スポーツナビでは、日本バスケ界の現状と向き合い、日本バスケの未来について考える企画『日本バスケ戦略会議』をスタートしたい。

 しかし、今月は本企画の主なテーマ『日本バスケ界の未来について考える』うえでも非常に重要な月でもある。国際バスケットボール連盟(FIBA)にJBA(日本バスケットボール協会)が国内バスケの改革を言い渡され、その期限が10月31日に迫っているのだ。

 FIBAから指摘されている内容は以下の通り。
(1)2つのリーグが併存している状況はFIBAの基本規則違反である
(2)国内を管理できていないJBAは改革が必要なため、2016−24に渡る代表プログラムの戦略的計画を導入する必要がある
(3)高校年代の国内大会と国際大会が重複している

 FIBAに対し、JBAがどのようなリアクションを見せるのか、本企画を進めるに当たっても、非常に気がかりなところではある。しかし、こういったFIBAからの“注意”は09年にもあり、一向に改善の余地が見られないのもまた事実である。

 では、日本のバスケシーンにおけるキーパーソンは、今の現状をどう捉え、何を思っているのだろうか? 第1回目の寄稿は、リンク栃木の運営会社であるリンクスポーツエンターテインメントの代表取締役社長を経て、NBL(日本バスケットボールリーグ)専務理事兼COO(最高執行責任者)として活躍する山谷拓志氏にお願いすることとした。チーム・リーグ両方の視点を持ちながら、まさに日本バスケ界の最前線で活躍する山谷氏は、日本バスケの未来を考える上で一人のキーマンであることに間違いない。第1回目の会議テーマは『2014−15シーズン開幕に際して……』。まずは山谷氏に今の思いをしたためてもらう。(スポーツナビ編集部)

10月、日本のバスケ界は重要な局面を迎える

NBL2014−15シーズンは、東西カンファレンス合わせて13チームが参戦する 【写真提供/NBL】

 スポーツナビ国内バスケ特別企画『日本バスケ戦略会議』に寄稿させていただくことになりましたNational Basketball League(NBL)でCOOを務めております山谷と申します。これから1カ月に1回、この場をお借りしてコラムを書かせていただきますのでどうぞよろしくお願い致します。

 10月に入り本格的なバスケシーズンが到来しました。現在、女子日本代表は世界選手権で堂々たる戦いぶりを見せてくれています。NBLは来る10月10日から2年目のシーズンが開幕し、NBDL、bjリーグ、NBAも今月から続々とレギュラーシーズンが開幕します。バスケファンの皆さんは、観戦や応援の準備に余念がないのではないでしょうか。

 さて一方で、この10月に日本のバスケ界は重要な局面を迎えます。FIBAからさまざまな改善要求を突き付けられ、その成果いかんではペナルティーを受けることも辞さない状況です。その詳細についてはさまざまなメディアでも触れられていますのでここでは割愛しますが、NBLの当事者として最も関係のあるアジェンダは何といっても「リーグの統合」です。FIBAはこの点について09年から指摘し続けており、本来であればNBLがスタートした13年に改善されていなければならなかったのですが、20年の東京五輪開催が決まっても改善される道筋が立たなかったため、FIBAがしびれを切らして勧告に踏み切ったという格好です。ただFIBAの言わんとするところは、「リーグを統合すること」が目的なのではなく、統合によって日本のバスケを発展させることにあります。60万人以上の競技人口を有し、世界有数の経済大国であり、何より五輪開催が決まった日本において、バスケは強化・普及・ビジネスそれぞれの側面においてまだまだ発展の余地がある、ということをFIBAは指摘しているわけです。

日本バスケにおけるNBLの役割

2020年までの間に、バスケ界をとりまく環境は大きく変わっていく 【写真提供/NBL】

 今回スポーツナビ編集部から『日本バスケ戦略会議』というお題をいただき、その第1回目ということもありますので、まだまだ発展の余地がある日本のバスケのこれからについて少し考えてみたいと思います。ただ、日本バスケのこれからといっても話が多岐にわたってしまいますので、あくまでも当事者視点ではありますが、日本のバスケの発展に向けて最も重要であると考えている「国内トップリーグのあるべき姿」という点に絞り、そこからみる現行NBLの役割について整理してみたいと思います。

 昨年7月のNBL設立時のスピーチでも話させていただきましたが、NBLについては国内トップリーグの理想形には程遠いというのが実状です。試合の質、集客、メディア露出、収益のいずれをとっても不十分です。では、「国内トップリーグのあるべき姿」とはいったいどのようなものなのでしょうか?

 国内トップリーグの“あるべき姿”とは――。
〔1〕選手、チーム、審判のレベルが日本で最も高く、質の高い面白い試合が繰り広げられているリーグ
〔2〕その試合に数多くの観客が集い、数多くのメディアが注目し、多くの支援を得ているリーグ
〔3〕その結果として多くの収益を確保し、その収益が選手をはじめとするリーグに関わる人や施設などにきちんと還元され、さらなるレベルや質の向上を目指しているリーグ

 上記のように書いてみると分かる通り、トップリーグの“あるべき姿”とはそんなに難しくなく、至ってシンプルです。では、なぜこれまで日本でこのような理想的なトップリーグが生まれてこなかった、もしくは目指されてこなかったのでしょうか。これも答えは明快で、これまで日本に存在してきた「実業団リーグ」「日本リーグ」「スーパーリーグ」「JBL」「bjリーグ」「NBL」といったトップリーグでは、上記〔1〕〔2〕〔3〕のいずれかが欠けていた、ということなのだと思います。

 それゆえに、現在検討されている16年から開始が予定されている「統一プロリーグ」においては、何より〔1〕〔2〕〔3〕のサイクルを生み出すことが絶対的に必要となる前提条件となります。逆にいえば、このサイクルが生み出されないリーグとなってしまうのであれば、2つのリーグを統合する意味はありませんし、日本のバスケに明日はありません。

1/2ページ

著者プロフィール

一般社団法人日本バスケットボールリーグ(NBL)専務理事/COO 1970年生東京都出身 93年 慶應義塾大学経済学部卒業、株式会社リクルート入社。大学時はアメリカンフットボール部に所属し日本代表やオールスターに選出される。05年株式会社リンクアンドモチベーション入社、スポーツマネジメント事業部長就任。07年株式会社リンクスポーツエンターテインメント(リンク栃木ブレックス運営会社)代表取締役社長就任。NBLに所属するプロバスケットボールチーム・リンク栃木ブレックスの創業者としてチーム設立から3年目で日本バスケットボールリーグ(JBL)制覇を達成し日本一。3期連続で黒字化も達成した。日本トップリーグ連携機構による優秀GM表彰「トップリーグトロフィー」を08年から2年連続で受賞。公益財団法人日本バスケットボール協会新リーグ運営本部副本部長/COOを経て13年7月より現職、日本バスケットボール育成リーグ(NBDL)専務理事も兼務。著書に「スポーツ産業論(共著・ 杏林書院)」「やる気と成果が出る最強チームの成功法則(東洋経済新報社)」「すぐわかるアメリカンフットボール(成美堂出版)」などがある。「スポーツ経営論」「スポーツによる地域活性化」「モチベーションマネジメント」などのテーマで講演・寄稿多数。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント