可夢偉が語った!日本GP出場への確信 チーム消滅の噂も視線の先は鈴鹿へ

田口浩次

チーム売却でさらなる厳しい立場に

可夢偉は筆者に対して「いつも通り水曜日入りします」と答えた。苦境のシーズンを過ごす可夢偉だが、日本GPでの勇姿を見たいところだ 【Getty Images】

 当時、可夢偉はドライバー以上の役割を求められている状況をこう語った。

「このチームはあらゆる部分を変えていかなければいけないですね。例えばエンジニアやメカニックたちの時間マネジメントがなってない。ひとつ例を挙げれば、走行開始時間から逆算して、ギアボックスやエンジンの整備時間、さらにその時間を加味してブリーフィングして、どこを変更するかなどを決定しなければ時間が全然足りない。でも、そうした指示を出す組織図が成り立っていないので、時間を無駄に使い改善点が分かっていても走行時間に間に合わないことが起きる。こうした部分にドライバーは口を出す必要は本来ありませんが、僕はチームを早く良くして、結果につなげたい。だから、そうした部分にも口を出すことになる……」

 こうした可夢偉の努力もあって、少しずつチーム体制は再整備されていったが、今度はドライバーが口を出してもどうにもならない問題に直面する。チームの売却話だ。F1シーズンがヨーロッパラウンドに入った5月11日、ケータハムはテクニカルディレクターのマーク・スミス解任を発表。設計したマシンCT05のパフォーマンスがあまりにも低いことでの事実上の引責辞任だった。そして、パドックではオーナーのトニー・フェルナンデスがチーム売却を進めていると噂になった。常々、「今年も駄目だったら……忍耐や資金にも限界がある」と公言していただけに、この噂話に驚く人はいなかった。ただ、誰がチームを買収するのか、しない場合は08年スペインGPを最後に途中撤退したスーパーアグリF1チームの二の舞となるのか、話題はそちらに集中した。そして2カ月後の7月初旬、スイスと中東の投資家グループにチームは売却された。ここで投資家グループはアドバイザーのコリン・コレスにチーム運営を任せる決定をした。これがさらなる可夢偉の苦境を生む原因となっていく。

破棄された“全戦出場”の契約

 過去にHRTやミッドランドといったF1チームの代表を務めたコリン・コレスは、ドライバーズシートを積極的に売りに出すことで知られている。新たにチーム運営を開始した彼らは、早速、コスト削減を主目的としたスタッフ解雇を実施。40名以上のスタッフが解雇されたが、これは、今後チームが積極的にマシン開発する予定はなく、最低限のコストで走り続けることだけを選択したことを表している。可夢偉とチームとの間に交わされていた“レースドライバーとして全戦出場”という条件も「契約対象者であるオーナーシップが代わわった」として、可夢偉のシート保証はしない方針を決定する。するとパドックでは、「ケータハムのシートが売りに出されている。現在、レッドブルの育成ドライバーと交渉が進んでいる」などといった噂が流れた。そして、ベルギーGPでは日本のスーパーフォーミュラを戦う、アンドレ・ロッテラーが可夢偉の代わりとしてレース出場することが発表された。可夢偉がチームと結んでいた契約が破棄された瞬間だった。

 続く、イタリアGPも新人ドライバーが出場すると言われていたが、それらの話はまとまることはなく、日本にいた可夢偉は突然「イタリアGPは走れる」と連絡を受けて急きょ9月4日の木曜日に日本を出発した。そしてシンガポールGPも、直前まで新人ドライバーが走ると言われていたが、こちらも最後に可夢偉の出場が決定した。それにしても、パフォーマンスとしてはチームメートのマーカス・エリクソンより可夢偉の方が優れているはずだが、なぜ可夢偉のシートだけが売却されるのか? それは、マーカス・エリクソンの支払い方法にあるとある関係者は言う。

「彼の1200万ドルとも言われる持ち込み資金は、毎月分割で支払っているようです。チームからすれば、マーカスを外すと、すぐに資金が枯渇する。だから可夢偉のシートだけを売るんです」

可夢偉の勇姿を鈴鹿で見られる!

 ここまでが可夢偉が今年置かれている立場の概要だ。これだけ不安定な状況だけに、可夢偉の日本GP出場が心配されているのだ。

 実は9月25日に筆者は可夢偉と久しぶりに会った。久しぶりの可夢偉は少し筋力が落ちたように見えたので尋ねると、「体重は落ちましたね。今年のマシンって、体重の軽い方が(バラストを積めて)いい。あと、以前ほど今のF1マシンは(マシンダウンフォースもタイヤグリップも低くなり)筋力がいらないですから。金曜日に鈴鹿入り? 遅いですね! 僕はいつも通り水曜日入りします」と答えた。

 可夢偉は日本GPに出場する! もちろん、チーム消滅さえ噂されるようになってきたケータハムの現状は本当に厳しいものがある。この可夢偉が受けているスケジュールも突然変わるかもしれない。しかし、現時点で可夢偉の視線の先は鈴鹿に向いており、鈴鹿で全力を注ぐはずだ。今年は3年ぶりにフジテレビの地上波放送も決定した。“F1サーカス”で戦うことができるドライバーは22人しかいない。その中で唯一の日本人ドライバーとして戦う可夢偉の勇姿をぜひともチェックしてもらいたいものだ。

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