復帰登板で見える田中将大の未来像 “凄い投手”か否かを見極める魔球の割合

杉浦大介

メディアを驚かせたエースの早期復帰

現地時間21日に迫った復帰登板に向けて調整を続ける田中。関係者も驚く早期復帰だが、来シーズンに向けた試運転となりそうだ 【Getty Images】

「本当に今季中に復帰できるとはね。ショックと言えるくらい驚いているよ」

『スポーツ・イラストレーテッド』誌の元記者で、現在はフリーで活躍するジョー・レミア氏のそんな言葉は多くの人の思いを代弁しているのではないか。

 ヤンキースの田中将大の復帰登板が、現地時間9月21日(日本時間22日・ヤンキースタジアムのブルージェイズ戦)に迫った。右肘じん帯の部分断裂で故障者リスト(DL)入りしていたエースにとって、7月8日以来となるメジャーのマウンド。しかし、レミア記者同様、ここまでたどり着くとは筆者もとても思わなかったというのが正直なところだ。

“トミー・ジョン手術は必要ない”と複数の医師に診断されたのなら、右肘の内側側副靭帯の裂け目は本当にごく小さなものだったのだろう。それでも、大事な肘に少しでも傷があるのなら、抜本的な処置を施さないのはやはり、リスキーに思えた。筆者の周囲のほとんどの地元メディアは、“結局は手術に踏み切るだろう”と高をくくっていた感がある。
 リハビリが順調に進んでいると報道されても、現地時間8月29日に腕全体の張りを訴えた際には“やはり”と思わされた。たとえ手術しないにしても、今季はこのまま終了すると、その時点では誰もが考えたはずだ。

 しかし……すべての疑いを振り切り、25歳の日本人右腕は75日ぶりに大舞台に戻ってくる。紛れもなく、本人、関係者の努力のたまもの。待ちに待ったエースの復帰は、2年連続プレーオフを逃す寸前のチームにとって久々の明るい材料に違いない。

来季、そしてその先を見据えた登板に

「すべては肘の状態次第で、今回の先発はテストのようなものだろう。実戦で試して支障なければ、このまま来季に向けて調整する。もしも問題があれば、手術が再び視野に入る。そのときは2016年開幕が復帰のターゲットになって、18カ月をかけてじっくり調整させようという判断じゃないかな」

『スポーツ・イラストレーテッド』誌のベン・ライター記者の言葉通り、たとえヤンキースにとって消化ゲームに近くとも、1、2試合でも登板させるのは理にかなっている。実戦のマウンドに立てば、今後への指針はより明確に見える。良い手応えで終われば、長いオフに向けて、本人の気分的にもかなり違うはずだ。

 今季限りで引退するデレク・ジーターの本拠地最終戦と並び、21日の“田中復帰戦”は久しぶりにニューヨークが沸き返る一戦になる。そして、この試合において、筆者が注目している点がもうひとつある。故障前はスプリッターが全投球の25%を占めた田中が、カムバック後はどんな組み立てで投げ続けるのかということである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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