越川優が探求する「日本代表で戦う意味」 勝利を使命づけられた3度目のアジア大会

田中夕子

世界との差を埋めるべく基礎から見直し

2月に就任した南部新監督(写真)がキャプテンに任命したのが越川だった 【坂本清】

 昨年、日本男子バレー界にとって初の外国人監督として、ゲーリー・サトウ氏を招へいしたが、今年9月の世界選手権(ポーランド)の出場を逃したことや、ワールドグランドチャンピオンズカップ(13年11月、京都など)での成績不振を理由に、わずか1年で解任。迷走が続く中、男子バレー復活への第一歩として、2月、パナソニックパンサーズをVプレミアリーグで3度の優勝に導いた南部正司氏が新監督に就任。その南部監督がキャプテンに任命したのが越川だった。
「彼が積み重ねてきた経験は、他の選手にない、貴重なもの。世界と戦う集団になるために必要なことを、キャプテンとして伝えてほしいし、それができる選手だと信じています」

 現役大学生の山内晶大(愛知学院大)など、ようやく新戦力も加わり、5〜6月のワールドリーグに出場。越川自身もプレー面だけでなく、代表選手として戦う覚悟や責任など、若い選手に説いてきたが、結果は1勝11敗。今後につながる手応えよりも、まず思い知らされたのは、これまで以上に広がった、世界との差。

 南部監督も「想像はしていたが、これを埋めるのは容易ではない。体力面、技術面共に基礎から見直さなければダメ」と課題を提示し、実際に鹿児島や東京での合宿時も基礎力の向上に努めてきた。

 山内以外にも、柳田将大(慶應大)、石川祐希(中央大)など現役大学生が3人、日本代表に選出され、セッターの内山正平(豊田合成)といった新戦力、さらに越川と同世代で抜群の安定感を誇る米山裕太(東レ)など、ワールドリーグとは異なる布陣で今夏はフランス、チェコ、ブラジルへの1カ月に及ぶ合宿を敢行。大学生の3人にとって、これらの経験も貴重な糧となっていることに加え、チームとしても「自分たちの形が見えてきた。選手一人一人の戦術達成度もレベルアップしてきた」と、越川も手応えを感じている。

「目標はアジアナンバーワンの奪還」

 だが、間もなく迎えるアジア大会(19日開幕、韓国・仁川)は、経験を積むための場ではない。
 なかなか結果を出せずにいる男子バレー界にとって、勝つことは目標ではなく使命だ。
 4年前の中国・広州大会では日本が優勝しているとはいえ、もはや過去のこと。各国の強化体勢は目まぐるしく変化し、アジアの強豪だけでなく世界の強豪へと進化したイランや、地元開催で力を注ぐ韓国、大型化を図りチーム強化に努めてきた中国、さらにカザフスタンやインドなど、強敵がズラリと顔をそろえる。

 その中で、どう戦うのか。
「昨年のアジア選手権では4位でしたが、監督もメンバーも変わり、今年1年のチームとしての成長を見せたい。リオデジャネイロ五輪につなげるためにも、目標はアジアナンバーワンを奪還し、金メダルを取ることです」

 2年後だけでなく、6年後の東京五輪、そして、男子バレーの未来へ向けて。
 越川にとって3度目のアジア大会。負けられない戦いが、幕を開ける。

<了>

アジア大会2014韓国仁川

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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