メイウェザーが語るパッキャオ戦の可能性=マイダナとの再戦が凡戦で追い風に!?

杉浦大介

興行成績次第では求められるより上質なイベント

興行成績次第では、近未来にメイウェザーとパッキャオとのドリームマッチの実現があるかもしれない 【写真:AFLO】

 そこで、話は冒頭のコメントに戻る。今戦が試合内容、興行成績の両方で低調な結果に終われば、メイウェザー本人と『Showtime』の尻にも火がつきかねない。来年5月か9月に予定される次戦では、より上質なイベントを供給するプレッシャーにさらされるはず。その相手として、最適なのは誰だろうか?

 答えは依然として、長く“戦わざるライバル”であり続けて来たフィリピンの英雄、パッキャオに違いないのである。
「フロイドは誰とでも戦うよ。これまでもそうだったし、来年も同じだ。(パッキャオ戦実現には)いろいろな障害があるけど、乗り越えれば良い」
 マイダナ戦後には、メイウェザー・プロモーションの重役であるレナード・エラーベー氏もそう語っていた。リング上でのメイウェザー本人の発言も含め、陣営が公の場でパッキャオ戦にこれほど前向きな言葉を残したのは初めてだったかもしれない。だとすれば……!?

パッキャオ戦は「実現するときはするけど…」

「(パッキャオのことばかり)何度質問したって答えは同じだよ。実現するときはするのだろうけれど、俺は自分の試合は自分で決めるんだ」
 最終会見でのメイウェザーは、“最終決戦”に向けて前向きとは言い難いいつも通りの姿勢に戻っていた。依然としてゴーサインが出る可能性が高いとは思えず、現実的には次戦の相手の最有力候補はイギリスの雄、アミア・カーンだろう。ただ、今回の興行成績がすべて弾き出され、自身のマーケット価値の下落を認識したとき、メイウェザーも改めて考えるところはあるかもしれない。

 メイウェザー対パッキャオ戦は、もはや最強王者同士の決戦ではない。“ボクシング界のスーパーボウル”とは言えず、それよりも“キャリア晩年を迎えた2人の英雄の最後の大稼ぎマッチ”に近いのだろう。ただそれでも、戦わないままよりは実現した方がいい。

 マイダナとのリマッチがさまざまな意味で盛り上がりに欠けたことが、近未来のドリームマッチへの追い風になるとすれば少々皮肉ではある。ただ、もともとピークの選手同士の直接対決がまとまりづらいのがボクシングビジネス。“幻の一戦”を行なうには、流れ落ちる砂時計の砂が残り少なくなった今こそが、実は最後にして最高のタイミングなのかもしれない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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